西野志海(日経プラス10サタデー・キャスター、以下、西野):このコーナーは、BSテレ東で毎週土曜日朝9時から放送している報道番組「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」で、お伝えし切れなかったことを記事や動画でお届けしようというものです。
今回のテーマは「アメリカ撤収でシリアはどうなる?」。
山川龍雄(日経プラス10サタデー・メインキャスター、以下、山川):この1カ月くらいで、シリア情勢が目まぐるしく変わりました。まずは簡単に振り返っておきましょう。西野さん。

西野:はい。まず10月6日、トランプ大統領は トルコのエルドアン大統領と電話会談を行いました。その際、トルコがシリア国内へ南下することについて、「アメリカは関知しない」と伝えた、とされています。
そして翌7日にアメリカ軍は、シリア北東部からの撤収を始めます。すると9日にはトルコ軍がシリアの北東部に侵攻。この地域に住むクルド人への攻撃を開始しました。
山川:クルド人としては、過激派組織「イスラム国」(IS)を撃退するためにアメリカと手を組んでいたのに、梯子(はしご)を外されたような形になりました。危機感を抱いたクルド人は、それまで対立していたアサド政権と組むことにします。
西野: トルコによるシリア侵攻の激しさに慌てたアメリカは、ペンス副大統領やポンペオ国務長官が急きょトルコを訪問します。エルドアン大統領に自制を求め、5日間の停戦に合意しました。
トランプ氏の突然の発表は「時期尚早である」と、議会や国防総省、国務省などからも不満や批判が出ました。
山川:5日間の停戦が終わる22日、今度はロシアのプーチン大統領とエルドアン大統領が会談を行い、 シリア北東部の国境地帯からクルド人武装勢力を撤退させ、ロシアとトルコが共同警備する「安全地帯」を設けることで合意しました。
西野:そして、シリアの情勢が大きく動く中、アメリカの特殊部隊がシリア北西部で、イスラム国の指導者、バグダディ容疑者を殺害しました。
登場人物は多いし、いろいろな思惑が絡みあっているようなので、専門家に解説していただきたいと思います。日本エネルギー経済研究所中東研究センター長の保坂修司さんです。よろしくお願いいたします。
保坂修司氏(日本エネルギー経済研究所中東研究センター長、以下、保坂氏):よろしくお願いします。

1984年慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程修了、在クウェート日本大使館、在サウジアラビア日本大使館で専門調査員。日本学術振興会カイロ研究センター長、近畿大学教授などを経て日本エネルギー経済研究所中東研究センター長、研究理事。著書に『ジハード主義 アルカイダからイスラーム国へ』(岩波書店)、『サイバー・イスラーム 越境する公共圏』(山川出版社)など。
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