中林氏:そう。6月は米中首脳会談がある前だったので延期しました。常にトランプ大統領と歩調を合わせながら、言動を決めているわけです。

 米中は11月中旬にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)にあわせて首脳会談を開き、正式に合意すると報道されています(注:チリは国内事情を理由にAPECの開催を断念すると発表)。ただ、まだ文書に署名したわけではないので、何が起きるか分かりません。このタイミングで中国の悪いところだけをあげつらっていたら、中国側が反発して、ご破算になりかねませんから。

西野:ペンス氏の演説は、アメリカの有権者向けにはどんなメッセージが込められていたのでしょうか。

中林氏:アメリカでアンケートを取ると、およそ7割の人は「輸入関税の引き上げで、消費者がマイナスの影響を被る」と回答します。にもかかわらず、約6割の人は「中国には厳しく臨むべきだ」と答えます。つまり、多くの人たちが中国に対して強い姿勢で構造改革を迫るべきだと考えているのです。

 ペンス氏としては、選挙を踏まえて、そうした国民感情にも寄り添う必要がありました。だから、厳しく批判すべきところは批判したわけです。ここで何も言わずに、トランプ氏が貿易の部分合意だけを急いだら、国内から反発が出てくる可能性がありましたから。

山川:ここに最新の世論調査の結果があります。トランプ氏については、支持よりも不支持のほうが高い状況が続いていますが、中林さんは、トランプ氏再選の可能性はどのくらいあると見ていますか。

中林氏:世論調査の結果だけを見ると、今、大統領選を実施したら、民主党の候補が、エリザベス・ウォーレン氏やジョー・バイデン氏だった場合、トランプ氏は負けるという結果が出ています。ただ、2016年のトランプ氏が勝った選挙もそうでしたが、世論調査の結果が、必ずしも当てにならない。

山川:とりわけトランプ氏の場合、表向きは批判していても票を入れる「隠れ支持者」がいるといわれていますね。

中林氏:そうです。世論調査の結果に5ポイントとか、地域によっては10ポイントくらい上乗せしないと、投票結果と重ならないという人もいます。そう考えると、トランプ氏再選の確率は、今、選挙を実施したとしても、五分五分かもしれません。

 ましてやウォーレン氏やバーニー・サンダース氏のような、民主党の中でも左派色の強い人が候補になると、中道的な人たちの票が行かないので、トランプ氏が有利になるといわれています。オバマ政権のときも、2期目の選挙の際には、支持率はおよそ4割と低かったのですが、それでも勝ちました。

 あとはウクライナ疑惑の進展次第でしょう。どこまでトランプ氏の弾劾に向けた話が盛り上がるかどうか。

山川:弾劾は、共和党が過半数を占める上院で3分の2の賛成が必要なので、難しいと言われています。ただ、ここへきて次々と新しい証言や証拠が出ていますから、予断は許さない状況ですよね。

 ところで、話をペンス氏に戻すと、トランプ氏が弾劾されるとペンス氏が大統領になるわけです。共和党の中には、ペンス氏でいいじゃないか、という声もあると聞きます。

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