小泉氏:昨年発表された日本の防衛大綱でも、電磁スペクトラム戦というのが盛り込まれています。これは目に見えない電波空間での戦いが新しい戦場になっているという認識があるからです。

山川:ドローンみたいなものが出てきて戦い方が変わると、守り方も変わっていくわけですね。

小泉:そう。新しいテクノロジーが出現すれば、国家もテロ組織もそれを取り込もうとするわけです。

 アメリカのマティス元国防長官が現役時代に自著でこう書いていました。「戦争というのは人間の意志と意志のせめぎ合いであり、この本質は変わらない。どんなテクノロジーが出てきても、必ずその点では同じことが起きる」と。

 つまり、一方がすごいテクノロジーを持ったら、敵はそれで諦めるかといったら、そんなことはない。軍事力で劣ろうが、武装組織であろうが、アメリカ軍にどうやって対抗できるかを必ず考えてくる。その本質を見失うな、とマティス氏は警告しているわけです。

 私も本当にそうだと思います。例えばテロリストがドローンという便利なものを使って何かをやろうと考えれば、攻撃対象となる国家や現地の部隊がお手上げかといえば、そんなことはない。

 それに、さっきお話ししたように、相手が安価な攻撃手段を作り出せば、それに対する手段も低コストのものを考えるようになります。

山川:攻撃側が低コストのものを使う以上、抑止する側も低コストでなければ、成り立たない?

小泉氏:そういうことです。コストをかけていいんだったらドローンは、容易に落とせるんです。そうでないからレーザーや電波を考える。

 もう一つ、低コストの攻撃手段は、対象エリアが限られています。例えばアマゾンで買えるような十数万円のドローンに自分で作った爆薬を積んで軍用基地に突っ込ませたら何が起こるかというと、不幸にしてケガをしたり、亡くなったりする方がいるかもしれませんが、大規模なことは起こらないでしょう。

 なぜかというと、基地というのは十分な広さを持っていて、危険な施設は離して、避雷針を立てて、消火システムを付けているから。民間の施設はそんな防護をしていません。その結果、今回のサウジのように、火気のある施設に突っ込まれると、ああいうことが起きてしまう。

 安価な攻撃手段で国家の重要施設が破壊されるものではありません。そういうものをやろうと思ったら巡航ミサイルなり、爆撃機なり、古典的な攻撃手段を持たざるを得ない。

 ドローンの自爆攻撃は戦争の一部を変えるかもしれませんが、戦争のやり方がガラッと変わる話ではありません。戦争には絶えず新しい技術が追加され、それに対処する技術も開発されていくのです。

西野:はぁ。日々変わる中東情勢と新しい技術に、こちらも付いていくのが大変です。小泉さん、詳しい解説を、ありがとうございました。

(注:この記事の一部は、BSテレ東「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」の番組放送中のコメントなどを入れて、加筆修正しています)