西野:ドローンという新しい兵器が出てきて、今後戦闘がどうなっていくのか不安になってきました。そこで最後の疑問はこちらです。

戦争の 新たな脅威は 低コスト?



山川:先ほど小泉さんが指摘していたように、ドローンは小型であれば、従来兵器よりも低コストで済みます。そうなると、国家という大きな組織でなくともテロリストがそれを保有して、そこに生物兵器を乗せるとか、「戦争が手ごろになってしまう」という脅威はありませんか?

小泉氏:それはあるんだろうと思います。ただ、できることは限られています。

 最近、武器展示会などへ行くと自爆型ドローンを造っている国が増えてきました。昨年、フランスで開催された展示会ではロシアやポーランドも出展していました。一種のトレンドではあると思いますが、しょせんは簡易版の巡航ミサイルにすぎません。本当の巡航ミサイルに比べると、射程は短いし、速度も遅いし、積める爆薬の量も限られます。

 アメリカが持っている巡航ミサイルなら飛行中に目標を変えることもできます。しかし、今回使われたドローンはおそらくそういうことはできません。防空システムが無いような、ものすごく防御が弱い目標に突っ込ませれば、一定の成果は上がるかもしれませんが、だからといって、在来型の兵器が要らないという話ではありません。

 だから戦争のやり方が変わるというよりは、戦争に新しい手段が加わったということですね。

西野:ミサイルに対しては迎撃システムがあると聞きますが、ドローンに対しても、そういうものはあるんですか?

小泉氏:同じです。結局、空を飛んでくるものなのでレーダーや赤外線で見つけて、そこに対空ミサイルや機関砲を当てる。ただ、ドローンの場合は安いので数が大量にくる可能性がある。そうなると対応しきれなくなります。

西野:今回も対応しきれなかった?

小泉氏:その可能性もあります。そこでアメリカやロシアが今考えているのは、物理的に弾を当てるのではキリがないので、レーザーにしたらどうかと。

西野:レーザー?

小泉氏:レーザーならドローンがたくさん飛んできても、照射すれば落とせます。

 それから民間のドローンに爆薬を付けて突っ込んでくる場合、飛行機の運航を阻害しないように、飛行場の上空には入らないようにプログラムされているものが多いそうです。そこでロシアが最近、取り組んでいるのはGPSの信号をいじってロシアの軍事基地を「飛行場の上空」とだましてしまうことです。すると、ドローンはだまされて帰ってくれる可能性が高い。

 最近、モスクワのクレムリンの周りで急にカーナビが使えないという現象が報告されているのですが、おそらくその目的で偽の電波を出しているのだろうといわれています。

西野:目に見えない戦いになってきているわけですね。