誰が首謀者か

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山川:ということは、イエメンからイラン製のドローンが飛んできたのだろうと。

小泉氏:フーシ派がイエメンだけから撃っているかどうかは分からないです。

 イランの革命防衛隊は、これまでフーシ派にミサイルを供与してきたと見られますが、今回は自分たちも撃ち始めたのかもしれません。「北側から飛んできた」とサウジは言っていますから。そうなると、フーシ派が北に出張ってきたのでない限り、革命防衛隊が撃ったことも考えられます。

 イエメン側からいくつかのドローンをおとりとして飛ばし、残りのドローンと巡航ミサイルは北側から飛ばすような分担をしたことも考えられます。今回の件では、そもそもフーシ派が主張しているドローンの数とサウジが証拠として示したドローンの数が食い違っていますから。

 私が把握している限り、これまでたくさんのドローンを飛ばした例としては、ロシアがシリアの基地を13機で攻撃したことがあります。今回はサウジの説明通りだとすると、18機。これだけ飛んでくると、サウジは混乱するでしょう。

 いずれにしてもフーシ派とその背後にいるイランというところまではなんとなく見えている。問題は革命防衛隊というイランの中の第二の権力みたいな人たちが自分たちでやったのか、最高指導者が国家の意思としてやらせたのか、今の段階ではそこが分かりません。それにこれまでの例からして、最後まで真相が明らかにならないのではないかと思っています。

山川:そうですね。安倍総理が6月にイランに行ったとき、タンカーが攻撃されましたが、あれも結局うやむやになっています。分かっていても公表されないこともありますから、今回もその可能性があるということでしょうか。

小泉氏:アメリカの軍や諜報(ちょうほう)機関は何らかの証拠はつかんでいるんじゃないでしょうか。少なくとも発射地点ぐらいは特定していると思います。

 アメリカの最近の警戒衛星であれば、巡航ミサイルの発射を捉えて軌道まで追跡します。リアルタイムで発射地点と軌道くらいはつかんでいると思います。ただ、これは生データなので、アメリカが公開することはまずないでしょう。

山川:自分たちの手の内を見せたくない?

小泉氏:そうです。どこまで分かるかということも教えたくない。

 あとは指揮系統がどうかということですね。命令が革命防衛隊の司令部から出ているのか、ハメネイ師自身が下したのか。これは通信を傍受するか、イラン政府内の相当ハイレベルな情報源を持っていなければ、分かりません。これも公開しないでしょうね。

山川:分かっていたとしても?

小泉氏:はい。2014年に親ロシア派の武装勢力がウクライナ上空でマレーシア機を撃墜したMH17便事件がありました。あれもアメリカは相当つかんでいるはずですが、「ロシアがやった」と言うと、ロシアは開き直って「証拠を出せ」と言います。そうすると「機密なので出せない」となる。おそらく今回も同じようなことになると予想します。

山川:証拠を出さなければ、経済制裁をするくらいしか考えられませんが、そうするとまた、攻撃が起きる可能性がありますね。

小泉氏:そうです。現実にはアメリカも自分たちだけで情報を抱え込むのではなく、例えば同盟国の指導者たちには、「大統領限り」みたいな機密扱いで証拠を見せている可能性はあります。

 アメリカとしては「公には言えないが、こういう証拠もつかんでいるので、我々の連合に入ってくれ」というような交渉は、現在もやっているんじゃないでしょうか。そうやってアメリカは、イランに対する包囲網をつくりたい。

 ただ、それで経済制裁を受けても、首都テヘランに巡航ミサイルが飛んでくるわけではありませんから、どの程度の抑止力になるかは疑わしい。イラン側がどんな受け止め方をするのかは心配なところです。

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