テレビ東京アナウンサー・西野志海と日経ビジネス編集委員・山川龍雄が、世間を騒がせている時事問題をゲストに直撃する動画シリーズ。第3回目のテーマは緊迫のイラン。一触即発の危機の中、雪解け策はあるのか。孫崎享・元イラン大使は「今は暴発回避で時間稼ぎの時」とする。
西野志海(日経プラス10サタデー・キャスター、以下、西野):3回目になりました。実は回を重ねるごとに緊張感が増してきたんです。
山川龍雄(日経プラス10サタデー・メーンキャスター、以下、山川):えっ、どうしてですか?
西野:世界情勢がこれだけスピーディーに変化している中で、重いテーマを毎回、扱っていますから。
山川:重要なテーマをきちんと分かりやすく、「そもそも」のところから質問するのは、大事なことだと思いますよ。
西野:このコーナーは毎週土曜日朝9時からBSテレ東で放送している「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」という番組でお伝えしきれなかったことを、ネットコンテンツとしてお伝えし直そうというものです。

1943年生まれ。1966年東京大学を中退し外務省に入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。その後、防衛大学校教授を務める。著書に『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『情報と外交』(PHP研究所)など。
今回のテーマは「緊迫のイラン」。ゲストは元イラン大使の孫崎享さんです。よろしくお願いします。
孫崎享(元イラン大使、以下、孫崎氏):よろしくお願いします。
西野:いつも川柳風にお伝えする今回の疑問、複雑な中東情勢にはなかなか切り込みにくいので、まずはこちらから。
ターバンの 色が違うの なぜかしら
イランでは、ターバンを巻いている偉い人がたくさん出てきますが、最高指導者のハメネイ師やロウハニ大統領などを見ていると、ターバンの色が違いますね。
山川:なるほど、ハメネイ師は黒いターバン、ロウハニ大統領は白いターバン、まずは、ここが疑問なんですね。

西野:そうなんです。これ、決まりがあるんですか?
孫崎氏:黒いターバンはムハンマドの血筋を引いている人たちがつけるんです。そして白い人はそういうものはない。
西野:血筋が大事なんですか。
孫崎氏:そうです。イスラムではスンニ派とシーア派という対立がありますが……。
山川:中東の中で、人口が多いのは、スンニ派。そして、シーア派の盟主といわれているのがイランですね。
孫崎氏:そうです。対立の理由はいろいろありますが、シーア派はイスラムを説いた預言者、ムハンマドと血のつながりのある子孫から指導者を選ぶべきだと考えています。(注:一方のスンニ派は、血のつながりには関係なく指導者を選出すべきで、その際、ムハンマドの教えである「スンニ(慣行)」を重視すべき、と主張している)。その血統を受け継いでいる人たちをスンニ派が追い出した。だから、戦うというのが一般にいわれていることです。
山川:じゃ、最高指導者が黒で、大統領は白というわけではない?
孫崎氏:首都テヘランの街を歩いていると、どうでもいいような宗教家が黒を巻いています。
西野:もう21世紀ですが、それが続いている。
孫崎氏:宗教をやってきた人たちは親から子へと引き継いでいますから。祖先をたどっていくと、ムハンマドにたどり着く。
Powered by リゾーム?