「香港を絞め殺してしまうかもしれない」

山川:それにしても、人口約700万人の香港で約200万人がデモをしたということは、日本に例えると、3000万人以上が永田町に集まったようなもので、この怒りはものすごいと思う。何がそんなに香港の民衆を怒らせたのでしょう。

興梠氏:せっかく一国二制度があって、香港には自由がある。その壁が壊れてしまうという危機感です。香港政府は全く抵抗できないことも分かっている。そうすると、自分たちが頑張らないと、事実上、香港は無くなってしまう。

西野:選挙に自由がないからデモという方法しかなかったという面もある?

興梠氏:政府もあてにならないし、議会も親中派が占めている。となると、国際社会に訴えるしかない。

西野:これだけインターネットが普及した時代だと、過去のデモとは手法も違ってくるようです。

興梠氏:民衆がとったスマホ映像が次々と流れました。中国は本当は香港のインターネットも封鎖したいぐらいの気持ちでしょう。

西野:その意味では、局面が変わる経過と見てよい?

興梠氏:中国は一党独裁でやっていくという思いが、習近平体制になって強まりました。これが急に変わることはないでしょう。香港を放っておくと、政敵の派閥が何をするか分からない。自分の安全にも共産党にもかかわってくる。

 香港の民主化を許してしまうと、全土に広がります。そこは妥協しないと思います。今はG20もあっていったん緩めても、長期的には絶対に抑え込む。政治的な自由があってこその香港だと思うのですが、そうすると危険だと考えている。このままだと香港(の自由や経済)を絞め殺してしまうかもしれない。

西野:うーん、今日はテーマが重くて、明るく質問するわけにはいきませんでした。

山川:スタッフから、そろそろまとめろと言われましたので、私も川柳風に書きました。

「大阪で 梅雨の晴れ間は 見えるかな」

 全然まとめになっていませんね(笑)。G20が開催される日本は梅雨の季節。対立が強まっている米中の間に、何らかの晴れ間が見えるか。そして、習主席の笑顔を大阪で少しくらい見ることができるかどうか。

西野:雲の切れ合間から笑顔がのぞくか、ということですね。興梠さん、今日はありがとうございました。

興梠氏:ありがとうございました。

山川:西野さんは、今日はちょっと表情が硬かったですね。

西野:人権や自由の問題って、この私でも力が入ってしまいます。たくさんの人の思いが詰まっていますから。来週もよろしくお願いいたします。

(注:この記事の一部は、BSテレ東「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」の番組放送中のコメントなどを入れて、加筆修正しています)

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