テレビ東京アナウンサー・西野志海と日経ビジネス編集委員・山川龍雄が、世間を騒がせている時事問題をゲストに直撃する動画シリーズ。第1回のテーマは、老後資金2000万円問題。飯田泰之・明治大学准教授は、社会保障制度の持続性が懸念される中で、「年金を納めない人は結局、大損する」と明言する。その理由とは。

西野志海(日経プラス10サタデー・キャスター、以下、西野):始まりました。キャスター西野志海の「もっとみたい!ニュースの疑問」。コーナー名が緩くて、脱力感がありますね。

山川龍雄(日経プラス10サタデー・メーンキャスター、以下、山川):飯田さん、気づきましたか。コーナー名の「(もっとみ)たい」と……。

飯田泰之(明治大学准教授、以下、飯田氏):西野アナの志海(もとみ)という名前をかけているんですね(笑)。

飯田泰之(いいだ・やすゆき) 明治大学政治経済学部准教授 1975年東京生まれ。マクロ経済学を専門とするエコノミスト。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書は『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)など多数。
飯田泰之(いいだ・やすゆき) 明治大学政治経済学部准教授 1975年東京生まれ。マクロ経済学を専門とするエコノミスト。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書は『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)など多数。

西野:そうなんです。この新コーナーは、毎週土曜日朝9時からBSテレビ東京で放送している「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」からスピンオフしてお届けしています。番組で放送している内容が、少し難解なところもありますので、ここでは、私が若い視点も交えて、素朴な疑問を投げ掛けていきたいと思います。これから毎週、山川さんにも手伝っていただいて、ニュースの疑問をひも解いていきます。

 第1回の議題は「年金2000万円問題」。明治大学の飯田泰之さんにお話を伺います。よろしくお願いします。

飯田氏:よろしくお願いします。

西野:このコーナーでは、私の疑問を川柳風に短冊にまとめることになりました。それでは1つ目を詠みますね。

「蓮舫さん、本当に5分で読めますか?」

山川:立憲民主党の蓮舫議員が、麻生太郎財務大臣に向かって「5分で読めますよ」と皮肉った、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが公表した報告書のことですね。

飯田氏:さすがに5分では読めませんよ。飛ばし読みしても、30~40分かな。

山川:ここにありますが、(全51ページで)結構、分厚いです。私も目を通しましたが、30分以上はかかりました。結局、麻生氏も蓮舫氏も熟読していない人同士が言い合いしていたということでしょうか。あるいは、官僚から要約版を渡されて、説明を受けたのかもしれません。

飯田氏:そんなところでしょう。ただ、そもそもこの報告書は、公表されようがされまいが、年金の額が変わるわけではないので、もめるのは不思議な光景です。年金の支給方式を変えるという内容なら、ぜひもめてほしいですが。

西野:私も読んでみましたが、投資信託による資産形成の話が出ていたりして、必ずしも年金のことがメインではなかったような印象を受けました。

飯田氏:本当は個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」などをPRするのが目的の1つでした。そして金融機関に対しても、「手数料やリスクが高い商品を売るのではなく、安全なものを提供しなさい」と提言しています。

西野:だから、金融機関の人たちが審議委員として集まり、厚生労働省でなく、金融庁が報告書をまとめた?

飯田氏:この手の報告書は、来年度の予算の獲得を狙っているから、この時期に出ることが多いんです(公表は6月3日)。金融庁の担当者としては、財務省にイデコや積み立てニーサの宣伝広報予算を請求したかった。

 その意味では、老後資金が不足しているという年金の話は、あくまでもイントロ扱いだったのですが、そこに注文がついてしまい、「蛇足でした、ごめんなさい」と謝ることになってしまった。

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