山川:豊島さんにはこれから年末までの日経平均の見通しをグラフにしていただきました。

五輪次第で2万円割れも

山川:5月くらいが底値で、その後は回復するという見立てですね。

豊島氏:オリンピックが延期ないし中止になれば、日経平均は相当売り込まれると思います。私のメインシナリオは1年の延期。それが決まったときが底値で、下限が1万8000円~1万9000円。そこで材料出尽くしとなり、その後は上昇するという展開を予想しています。

 年後半になると、中国がなりふり構わぬ金融再生支援策を打ってくるでしょう。トランプ大統領も選挙を意識して、米連邦準備理事会(FRB)に利下げの圧力をかけるはずです。財政出動を繰り出すことも考えられます。そうなると、買い材料がそろいます。

山川:新型コロナの問題が長引いても、市場はその前に反転すると。

豊島氏:マーケットは常に先取りして動きますから。

 中国政府は3月5日に開幕する予定だった全国人民代表大会(全人代)を延期しました。次に開くときには「経済テコ入れ」がテーマになるでしょう。そこで景気のいい話が出てくるはずです。ニュースの見出しに、AIが飛びつくでしょう。

 注意点は、中国経済にはいずれツケが回ってくるということ。この先さらに金融緩和を続ければ、地方政府や民間企業、金融機関などの債務がさらに増え、来年以降のリスクが高まります。

山川:コロナショックからは少し離れますが、アメリカ大統領選の民主党候補者指名争いでは、左派のサンダース氏がリードしています。このままサンダース氏が勝利すると、マーケットはネガティブに反応しますか。

豊島氏:サンダース氏だと、20%程度下がると見る向きもあります。

山川:そちらの方が、コロナショック以上に大きいですね。

豊島氏:一貫して「アンチ・ウォール街」を唱えてきた人ですからね。株の取引や売買益に税を課すといった、投資家が最も嫌がる施策を打ち出してくる可能性があります。

 ただ、サンダース氏では民主党が勝てない、つまりトランプ氏有利という連想が働いて、株価にポジティブと見る向きもあります。ウォール街は表向き「アンチ・トランプ」を口にする人が多いのですが、1対1で話すと、本音では「今回はトランプ氏に勝ってほしい」と打ち明ける人は多いですよ。

 総合すると、ウォール街では、7対3くらいでしょうか。つまり、サンダース氏が候補になると株価が下がると見る人が7割。

西野:さて、最後の疑問です。

経済の 教科書もはや 役立たず

 ここまで株価の行方を聞いてきましたが、もう一つ気になるのが、為替です。

 本来株が売られる局面では円高が進むというのが通例でした。ところが今回は現時点ではあまり円高に振れていません。

 また、このグラフが示す通り、ドル円の動きはVIXと相関関係があると言われています。その意味では、もう少し円高になってもおかしくないのですが、現状ではそこまで円が急伸しているわけではありません。必ずしも教科書通りには動いていないように見えるのですが、これはどう考えたらいいでしょう?

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