西野:もともと調整を必要としていたマーケットだったとすれば、この先は心配する必要はないのでしょうか。

豊島:現時点では調整局面と捉えてよいでしょう。

 ただ悩ましいのは、相手はウイルスだということです。バイオリスクは市場関係者にとって未知の経験です。2002~2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の問題が起きましたが、明らかに今回の方が影響は大きい。

 しかも先ほども申し上げた通り、当時とは市場を動かす主体が変わっています。日本のマーケット関係者は、2003年と比較したがりますが、あまり経験則は通用しないと思った方がいい。

山川:SARSのときはイラク戦争とも重なって一時的に世界の株価が急落しましたが、すぐに元の水準まで回復しました。

豊島氏:それにあのときは、トランプ大統領はいませんでした(笑)。これは大きいですよ。

西野:次の疑問に行きましょう。

リーマン級 コロナショックの 危険度は

 やはり気になるのはこの先の展開です。どのくらいを株価の下限と見るべきでしょう。

豊島氏:「恐怖指数」と呼ばれる米国株の変動性指数(VIX)で見ると、2月28日につけた高値が49。89だったリーマン・ショックにはまだ遠い。今後、感染の拡大次第で、50を超える可能性はありますが、それでもリーマン・ショック級とは言えません。

山川:ただ一方で、2001年のニューヨーク同時多発テロやアジア経済危機とは、ほぼ同じ水準です。

豊島氏:その意味では調整局⾯ではあります。そして過去の事例と決定的に違うのは、ウイルスという目に見えないものを相手にしていることです。この先の感染拡大について、確信を持って予想できる人はどこにもいない。この不安感こそが今回のショックの最大の特徴なのです。

 金融システムリスクであれば、どんな商品が問題となっており、どんな人たちが関与しているのか、ある程度の予測がつきます。しかし今回は金融関係者にとって、専門外であるところが震源地となっている。

西野:ただ、それでも豊島さんには、見通しを聞きたい(笑)。

豊島氏:はい。トレーダーは、売るか買うか、どちらかしかないわけですから、こういう状況でも自分の意見は持たなくてはいけません。

 私は感染の問題そのものは秋まで長引くかもしれないと覚悟しています。当初は気温の上昇とともにウイルスの活動が止まり、遅くとも6月には収束するだろうと楽観視していました。しかし最近、シンガポールやナイジェリア、ブラジルなど気温の高い地域でも、感染が確認されています。もう少し先まで長引くことを頭に入れておく必要がある。

山川:確かにアフリカや中南米で感染者が出たのは気になりますね。

豊島氏:それともう一つ、いったん陰性になった人が、再び陽性に戻るケースが相次いでいます。これだと世界保健機関(WHO)も終息宣⾔を出しにくい。いったん4⽉くらいに収束が⾒えてきても、その後、また感染者が出てきて、終わりが見えないという展開もあり得ます。そうなると、マーケットも落ち着かない。

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