ただ、来るべき調整局面を迎えたと見ることもできます。NYダウは昨年から上がりっぱなしで、最高値を更新し続けていました。自分だけ置いていかれたくないという、いわゆる「持たざるリスク」を恐れて、全員参加型で上昇したのが実情です。誰もが警戒しているところをコロナショックが直撃したわけです。

西野:NYダウは直近の高値から見ると、14%の下落になります。

豊島氏:下がったとはいえ、2万5000ドル台。しばらくは乱高下すると思いますが、この程度の下げ幅であれば、大したことはありません。俯瞰(ふかん)してみれば、この1~2年の中ではまだ高い水準にありますから。

山川:日経平均もNYダウに連動して下げ幅がきついですね。

豊島氏:日本人としては残念ですが、現在の日経平均はほぼ9割方、前日のニューヨーク市場で決まっています。為替も同様です。

 以前、山川さんとBSの報道番組「日経プラス10」でご一緒したときに、放送中に3円も上昇したことがあったでしょう。あれも日本の夜間でしたから、実際はニューヨーク市場が動かしていたのです。

山川:そうでしたね。小谷真生子キャスターと3人で話している最中に、テロップのドル円表示が信じられないような動きを見せて、一瞬言葉を失ったことを覚えています。

豊島氏:懐かしいですね。では、ニューヨークで誰がそんなに円を動かしているかと言えば、それはAI(人工知能)なんです。

西野:AI?

AIが相場を振り回す

豊島氏:そう。人間ではありません。トレーディングのプログラムが動かしているのです。

 あらかじめ組み込んだ売買アルゴリズムを基に、ニュースの見出しに反応して注文を出す。例えばトランプ大統領がツイッターに書き込んだ発言の内容や、新型コロナウイルスの感染者の状況などを手掛かりに、高速売買を繰り返す。

西野:市場を動かしているのはコンピューター?

豊島氏:そうです。AIがマーケットを揺さぶり、人間は解説役に回っている。何か物悲しいですね。

 ニューヨークではウォール街の地盤沈下が進んでいます。伝統的な投資銀行が支配する市場とは別に、巨大なコンピューターで注文を繰り返す人たちの存在感が高まっています。

 彼らはウォール街の少し北側、マンハッタンの20~30丁目あたりに、ビルのワンフロアを借りてコンピューターを置いています。典型的なのは、親から巨額の資産を相続したユダヤ⼈が若者中心に5〜6⼈雇っているケース。雇われた人たちは円を扱っていても、日本経済のことは知らない。

西野:コンピューターのことは分かっても、経済に関する知見はあまりない?

豊島氏:そう。そもそも高速取引は100分の1秒単位でオーダーを出しますから、人間の判断が介在する余地はありません。100分の1ということは、24時間で従来の1カ月分くらいに相当します。

 日本人はその実態をあまり知りません。ニューヨークから見ると、日本人は知識レベルが高過ぎて、理詰めで考えないと納得しない。

山川:考えすぎて、逆に間違ってしまう?

豊島氏:そう。今回はAIが売り注文を出すきっかけが新型コロナウイルスだったわけで、それ以上、理詰めで考えようとしてもキリがありません。