SARSより 悪影響は 大きいの?

山川:永濱さんは旅行需要に限定した試算を出していますが、それによると、日本の国内総生産(GDP)に及ぼすマイナスの影響は、SARSの時が5360億円。これに対して、今回の新型肺炎は5270億円となっています。

永濱氏:あくまでもSARSと同じような経緯をたどった場合という前提です。SARSの時は2003年3月に感染拡大が大きく伝えられ、2003年7月に終息宣言を出しました。

 今回は1月に感染拡大が伝わり、5月に終息宣言が出るというイメージです。これがもっと長引けば、その分だけ、影響は大きくなります。

西野:旅行需要というのは、中国人の日本への旅行ということですか?

永濱氏:いや、全体です。日本人も旅行を控えますので、両方を合算しました。そうすると、5月に終息宣言が出る場合、SARSの時とほぼ同じなりました。

 ただ内訳は、当時とかなり違います。SARSの時は5360億円のうち、インバウンドの悪影響が約600億円。残りは日本人の旅行減少で、特に海外旅行を控えたことが響きました。今回はSARSの時に比べて訪日中国人の数が増えていますから、インバウンド消費の落ち込みが大きくなる。

山川:下のグラフの通り、SARSの時の訪日中国人は44万人。これに対して、2019年は959万人ですから、22倍に増えています。おのずとインバウンドの影響が大きくなるわけですね。

永濱氏:そうです。2019年の訪日中国人による消費額は約1.7兆円。とりわけ春節のお休みに重なっているので、影響が大きい。その結果、5270億円のうち、半分以上の3400億円がインバウンドの落ち込みとなりました。

山川:逆に言うと、今回は日本人の旅行消費はあまり落ち込まないと見ているわけですか。

永濱氏:そうです。私も意外だったのですが、日本人の旅行消費額は、2003年に比べて2割近く減っています。その結果、こちらの影響は前回よりも限定的となりました。

西野:高齢化などが影響しているのですか?

永濱氏:それもあるかもしれませんが、可処分所得が減っていることが大きいのではないでしょうか。

西野:結果として、マイナスの影響の合計は、SARSの時とほぼ変わらない?

永濱氏:ただ、ここは要注意です。この試算はあくまでも5月に終息宣言が出ると仮定したものです。もっと長引いて、オリンピックの開催が危ぶまれると、金額は大きくなります。

 さらに私の試算はあくまでも旅行需要に限定したものです。中国経済の落ち込みなどは反映していません。

 私が足元で一番、心配しているのは春闘ですね。

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