経済と安保のはざま

佐藤氏:そうです。しかも、経済と安全保障の結びつきがどんどん強くなっている。

 アメリカは安全保障を理由にファーウェイや中興通訊(ZTE)などの中国のハイテク企業に厳しい規制をかけました。これから宇宙産業などにも、この動きが広がっていくでしょう。トランプ大統領が再選すれば、米中のデカップリング(切り離し)はさらに強まる可能性がある。

 このときの日本の立ち位置は非常に難しい。アメリカとも中国とも取引がある日本企業は多い。両方から踏み絵を要求される可能性があります。

山川:特にデジタル分野は、両方にいい顔をしてバランスを取るのが難しくなってきている。

佐藤氏:そうです。これからますますその傾向が強まるでしょう。人工知能(AI)や次世代通信規格の5G、量子暗号通信などの分野は、安全保障と一体ですから。

 日本も巻き込まれることは十分あります。というより、巻き込まれないことはないでしょう。日本政府も今のうちからサプライチェーンをしっかりとチェックしておかないと、いざというときに大変なことが起こりかねません。

西野:川柳に戻って、少し身近な話題について聞きたいのですが、習主席が来日する場合の「おもてなし」はどうなるのでしょう。

 昨年5月、トランプ大統領が国賓として招かれたときは、大相撲観戦をしたり、炉端焼きの食事をしたり楽しそうでした。習主席だと、どうなりますか。

佐藤氏:いろいろと考えていると思いますよ。間違いなく、中国側はトランプ大統領を意識した対応を求めてくるはずです。

山川:アメリカの大統領と同格に見られることを意識する?

佐藤氏:中国国内向けだけでなく、世界に向けて「いい絵」をアピールしたいでしょう。習主席も従来よりは笑顔を見せるでしょうし、夫人のパフォーマンスも含めて、意識した行動をすると思います。

山川:習主席は安倍総理と会うときは、仏頂面の印象があるので、違った一面を見ることになるかもしれませんね。

 個人的な意見で言うと、学生を前にしていろんな話をするとか、日ごろ見せない側面を見せてほしい。

佐藤氏:やはり天皇陛下がどんなお話をされるかが気になります。日本国民の象徴として多くの思いを受け止めながらお言葉を発せられるでしょうから、今回は非常に難しい。繰り返しになりますが、国賓というのは重たいです。

山川:来日するまでに、トゲが1つでも2つでも減ることを期待したいですね。

西野:交渉のカードというのは、日本側にはあるのですか。

佐藤氏:声をかけたのが日本側だというのが弱いところですが……。中国にとっても、安全保障や経済でアメリカと戦っていますから、日本を少しでも引き込みたいという思いがあるでしょう。それに中国側の意見をトランプ大統領に伝えてほしいという思いもあるはずです。

 繰り返しになりますが、日本国民の危機感を中国にぶつけないといけない。騒がないと、何事もなかったかのように、スーッと来日しまいますよ。外務省もしっかり交渉してほしい。しなければなりません。

西野:日中関係はトゲがたくさんあっても、嫌いだから別れるとは言えないところが難しいですね。

 佐藤さん、ありがとうございました。

(注:この記事の一部は、BSテレ東「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」の番組放送中のコメントなどを入れて、加筆修正しています)