回避すべき天皇訪中

佐藤氏:天皇陛下をそういう形で政治利用されてはいけません。今回も人権については、アメリカが香港、台湾、ウイグルと、それぞれ法案を出してけん制しています。

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 この通り、台湾については18年3月に「旅行法」を成立させ、台湾との高官レベルの相互往来を解禁しました。

 香港については「人権・民主主義法」を成立、トランプ大統領も署名しました。香港で人権弾圧などがあれば、それに関わった中国政府関係者への制裁を科すことができるようになりました。

 ウイグルについても2019年12月、ウイグル族を弾圧する中国当局者に制裁を科すようトランプ政権に求める「人権法案」を下院で可決しました。上院で審議している段階です。

 このようにアメリカが中心となって、中国の人権問題に対して圧力をかけている最中に、同盟国である日本が間違ったイメージを与えるわけにはいきません。しかもそれに天皇陛下が利用されるのは、絶対に避けなければならない。

 当然、日本政府も陛下の訪中の話が浮上しないように外交努力をしています。ただ最終的には、その場で習主席が言わないという保証はありません。

山川:人権問題については、12月の日中首脳会談でも、安倍首相は習主席に念を押していました。習主席は「内政干渉である」と返しましたが。

佐藤氏:ウイグルという個別の名前を出したのは驚きました。もっと一般的な形で人権問題に言及すると思っていたので。

山川:さすがに安倍総理もアメリカからの見え方を気にしたのではないでしょうか。

佐藤氏:安倍首相の支持層である保守派も今回の国賓訪日は疑問を持っている人が多い。ウイグルについて何も言わないのは、首相の気持ちとしてもストンと胸に落ちないのでしょう。

西野:それでは最後の疑問です。

米中を 分け隔てなく おもてなし?

 ここまで日中間に刺さる4つのトゲの話をしてきましたが、一方で、中国との経済的な結びつきも無視できませんね。

佐藤氏:そうです。2020年1月19日は、現行の日米安全保障条約署名の60周年。アメリカとの関係はこれまでにないくらい強固になりました。

 一方で隣国である中国は、経済規模を拡大している。この傾向は今後も変わらないでしょう。下のグラフの通り、今や中国のGDP(国内総生産)は、日本のおよそ3倍です。いずれアメリカを抜くといわれています。

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山川:日中の貿易額の伸びを見ても、お互いがサプライチェーンで結びつき、切っても切り離せない関係になっています。言わなければならないことは言うべきだけれど、関係は改善したい。そこが難しいところですね。

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