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双方が望まない全面戦争

黒井氏:こういう時代ですから、そんなやり取りをしていることがメディアに流れたら、大変なことになります。

 トランプ大統領はアメリカに損害が出る、あるいは米兵が死ぬことは許さない。それが公約ですから、報復に出る。しかし口では圧力をかけても、戦争はしたくない。それで戦争にならなかったら自分の手柄だと言う。これは一貫している姿勢で、対北朝鮮と同じです。

 イランもやり方が似ているところがあります。強気な発言はしますが、アメリカと全面戦争なんて望んでいない。ただ、三日月地帯においては覇権を進めたい。アメリカが戦争を望まずに、黙っていてくれるなら、それに乗っかろうという腹積もりなのです。

山川:写真にある通り、イランが1月8日に米軍が駐留するイラクの軍事施設に向けて撃ったミサイルは命中精度の高いものだったといわれています。

 イランはその攻撃を事前にイラク政府に伝えており、イラク側から情報を入手した米軍は、危機を回避できた。そのため、アメリカとイランの間では、「あうん」の呼吸で死者を出さなかった、という見立てもありますが。

黒井氏:「あうん」かどうかは分かりません。結果的にそうなっただけかもしれません。

 要はイラク軍の基地ですから、イランはイラクの兵士を殺害するのはまずいわけです。ただ、なぜアメリカ大使館を直接攻撃しなかったかと言えば、そこは全面報復につながることを恐れたのでしょう。一定のブレーキはかかっていたと言えます。

山川:最後にウクライナ機の墜落の件です。これを収録しているのは1月11日で、アップされるまでに原因究明が進んでいるかもしれませんが、今のところイラン側の誤射ではないかとみられています。(注:このインタビューの収録後、実際にイランは誤射を認めた。革命防衛隊が民間機を米軍の巡航ミサイルと誤認したとしている。)

黒井氏:一番情報を持っているのはアメリカです。偵察衛星や電波傍受で情報を取っています。空港の近くにいるイラン軍の防空拠点からの対空ミサイルがヒットしたというのは動かない事実でしょう。

山川:自分たちがミサイルを撃ち込んだ直後ですから、相当ピリピリしていた。それが誤射につながったということでしょうか。

黒井氏:ピリピリしていたとしても間違えようのない状況です。たくさんの民間人が亡くなっており、これによってイラン側が今後、強硬的な手段に出ることが難しくなったという作用もあるかもしれません。

山川:ここで負い目が出てきたと。