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中東に かかる三日月 どう動く?

 先ほどから出ているように、ソレイマニ氏は中東の至るところでシーア派の民兵組織を育てました。その拠点をたどってみると、三日月の形をしているんですね。

山川:イランと対立しているのは、イスラエルとサウジアラビア。その2つの国に対し、民兵組織による包囲網を築こうとしている。

 まずイスラエルに対しては、レバノンのヒズボラ、そしてパレスチナにもイスラム原理主義組織「ハマス」がいて、ソレイマニ氏が支援してきました。この2つでイスラエルを挟み撃ちにしている。

黒井氏:ハマスはシーア派ではありませんが、反イスラエルということで手を組んでいます。

山川:イラクにはカタイブ・ヒズボラ、そして、どこまでソレイマニ氏と関係があるかは不透明ですが、イエメンには反政府武装組織「フーシ」がいて、サウジアラビアに対抗している。

 仮にイランとアメリカが軍事衝突を避けようとしていても、これらの三日月地帯の民兵組織が報復に出る恐れはありませんか。

黒井氏:ソレイマニ氏の後継者は、コッズ部隊の副司令官だったカーニ氏に決まりました。こうした民兵組織によるテロが続くのは間違いないでしょう。

 ただ、ソレイマニ氏の行動力は突出していました。狡猾(こうかつ)なやり方、残虐性も含めて、シーア派民兵組織の力がどうなっていくかは不透明です。特にシリアについては、ロシアとのやり取りが必要です。イスラエルとも対峙しなければならない。そのあたりがどうなっていくのか。

山川:策略にたけた指導者を失ったことで、攻撃力が弱まる可能性もあると? 特にISは喜んでいる?

黒井氏:ISもそうですし、アサド政権に反対する勢力は、この状況を期待を持って見ているかもしれません。

山川:リスクシナリオで、考えられるものをパネルに示しました。最悪のシナリオはアメリカとイランの国と国との全面衝突。ただ先ほどから出ているように、今のところ両国とも回避しようとしているように見えます。

 それから中東に広がる民兵組織による報復攻撃。例えばイスラエルにロケット弾などを打ち込むのではないか。さらにサウジアラビアへは石油関連施設への攻撃も考えられます。原油の通り道であるホルムズ海峡を航行する船舶への攻撃にも注意を払う必要があります。

 さらに民兵組織によって、イラク国内でアメリカに対する報復が激しくなるかもしれません。もちろんアメリカ本土を含む、世界的なテロの懸念も拭えない。

 黒井さんはこのうち、どんなシナリオを心配していますか。

黒井氏:アメリカ本土を含むテロの可能性については、イランというよりもISがメーンになると思いますので、私には何とも言えません。

 ペルシャ湾については、今のところは大きな戦争にはならないと見ていますが、お互い相手があることですから、偶発的なリスクは常にあります。小競り合いがないとは断言できません。

山川:そもそも、最高指導者であるハメネイ師が小競り合いも含めて、全部コントロールしているのでしょうか。