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西野:お葬式で泣いている人たちが大勢いました。

黒井氏:あれは政府のメディア戦略の面もあると思います。ただ、カリスマ的な存在だったことは間違いない。

 その一方で工作活動では情け容赦がない。イラクのイスラム教スンニ派地域は、ISが来てひどい目にあいましたが、そこをコッズ部隊が仕切る民兵が奪還しました。そのときには「今度は別の悪魔が来た」と言われました。

 シリアでも独裁的なアサド政権に対する民衆の抵抗が起きましたが、彼はその民衆に対して弾圧を繰り返しました。レバノンを中心に活動するシーア派系イスラム原理主義組織「ヒズボラ」や、イラクのシーア派民兵組織は、ソレイマニ氏の影響力が大きいのですが、そのやり方は残酷です。街を封鎖して餓死者を出したり、民間人に対して辺り構わず砲撃をしたりしています。見る人によっては、アサド政権よりもひどい。

山川:日本だとテロリストが英雄ということは考えられませんが、よく考えてみると、日本も戦国時代は残虐なことを繰り返した武将がヒーロー視されています。時代と場所が変わればそういうこともありうる……。

黒井氏:そもそもイランではテロリストとは思われていません。英雄かテロリストか。どちらの側で見るかによって、全く変わってしまう。

西野:ところで、ソレイマニ氏殺害のニュースを最初に聞いたとき、「あれっ」と思ったのは、どうしてイラクで殺害されたのかと?

黒井氏:先ほども申し上げましたが、彼はイラクの民兵組織の黒幕でもあります。一緒に殺害されたのが「カタイブ・ヒズボラ」という組織の幹部、ムハンディス。カタイブ・ヒズボラはソレイマニ・グループの直系といっていい組織で、今まさにアメリカに様々な攻撃を仕掛けている当事者と見なされています。

 ソレイマニ氏は、シリアから航空機でイラクに入り、ムハンディス氏がそれを空港で迎えようとしていたとみられています。2人は対アメリカの今後の作戦を練るためのトップ会談を予定していたのかもしれません。そこをアメリカから狙われたわけです。

山川:アメリカからすれば、いつでも殺害しようと思えばできるくらい追跡はしてきたのでしょう。ただ、殺害した後の影響が恐ろしくて、これまでは手を出してこなかった。トランプ大統領は歴代の大統領とは違う判断をしたということでしょうか。

黒井氏:トランプ大統領は「アメリカ人ファースト」。直前にロケット弾の攻撃でイラクの米軍基地が襲われたり、バグダッドにあるアメリカ大使館に放火されたりする事件が起きていました。アメリカ人の命が危険にさらされているのに何もしないわけにはいかないと判断したのでしょう。

西野:ソレイマニ氏が殺害されて、今後がどうなっていくのかが、気になります。

山川:あれだけイランの民衆が泣いている映像を見せられると、民兵組織が弔い合戦をやるのではないかと心配になってきます。

西野:そこで次の疑問です。