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残虐な テロの指導者 なぜ英雄?

 まずソレイマニ氏とは、どんな人物かを知っておく必要がありますね。

山川:もともとは農家の子ということで、貧しい生まれだったようですね。

黒井氏:1979年のイラン革命のときにエリート層は国外に逃げたので、おのずと貧しい地域から出てきた人が多い。

 ソレイマニ氏は若い頃に革命防衛隊に入り、イラン・イラク戦争に従軍しました。同戦争はイラク軍の強力な兵器に対して、イランは人海戦術で対抗しました。そのためイラン側は戦死者が多かった。そんな中で生き残った人たちが、現在の革命防衛隊の上層部を構成している。彼もその1人です。

西野:革命防衛隊とはどんな組織ですか。イラン国軍とは違う?

黒井氏:国軍は、イラン革命前のパーレビ国王時代からの軍なので、革命によって最高指導者となったホメイニ師はあまり信用しませんでした。革命防衛隊はホメイニ師の親衛隊として発足し、優先的に予算を振り分けられ、次第に実力が逆転していったのです。

西野:革命防衛隊の方が、国軍よりも上位にある?

黒井氏:勘違いしている人が多いのですが、国軍も革命防衛隊と同様、現在の最高指導者であるハメネイ師の指揮下にあります。革命防衛隊が1軍で国軍が2軍のようなイメージです。

山川:革命防衛隊の中で、のし上がったソレイマニ司令官は何が優れていたのでしょう。

黒井氏:上層部の中では、現場にいて実戦に強い人物として知られています。戦闘指揮官として、実績を積み上げてきました。98年に精鋭「コッズ部隊」の司令官になってから、20年以上が経過しています。

イスラム革命の輸出工作部隊

山川:コッズ部隊の任務とは?

黒井氏:イスラム革命以降、イランでは「革命を輸出する」ことが政権のアイデンティティーとなりました。そのために戦争を遂行する部隊とは別に、海外で工作する部隊をつくった。それがコッズ部隊です。民兵組織への支援や諜報(ちょうほう)活動などを担っています。

 反政府勢力に関わるような人たちを世界各地からイランに連れてきては軍事訓練を施し、武器を与えて本国に戻す。そうやって中東各地にイスラム革命を起こすための部隊を組織化してきました。つまり中東に散らばる民兵組織の黒幕的な存在です。しかも、諜報戦略に優れ、国を巻き込むような大掛かりな謀略に優れていた。

西野:イランでは英雄視されていますが……。

黒井氏:中東はどの国もそうですが、上層部が腐敗していることが多い。その中でソレイマニ氏の生活はつつましやかで、性格も真面目だった。そんなキャラクターもあって、本国では人気があります。

 特に2014年以降は、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討に尽力し、それをイランの政権が宣伝に使ったことで、人気が一気に高まりました。彼を慕っているイラン人は多い。