全2727文字

 先日も、カネカがパタハラで告発され炎上した。ハラスメント問題を放置することは、企業にとって大きなリスクであるーー。改めて、その事実に直面したビジネスパーソンも多いはずだだ。

 一方、個人の悩みも深い。「今日のワンピース、似合っているね。デート?」と女性社員をほめる。後輩のミスに「何をやっているんだ、しっかりしろ」と怒鳴る。「新婚なのに残業させて申し訳ない。子作りの邪魔だよな」と部下に謝る。

 どれも相手を苦しめたり、嫌がらせたりするつもりがあったわけではない。むしろ育成のために、またはコミュニケーションを円滑にしようと自然に出てきた言動だ。それなのにある日「ハラスメントですよ」と注意を受けてしまう——。セクハラ、パワハラを巡って、日本の職場では大きな意識の“乖離(かいり)”が生まれている。

 「一体、何がアウトなんだ!!!」

 本連載では「働き方改革実現会議」の一員として法改正の渦中にいるジャーナリストの白河桃子氏が、セクハラ・パワハラの「境界線」について解説。これを読めばもう、迷うことはなくなるはずだ。(聞き手/日経ビジネス 日野なおみ、構成/宮本 恵理子)

少子化ジャーナリスト 白河桃子(しらかわ・とうこ)
東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、住友商事などを経て執筆活動に入る。2008年中央大学教授山田昌弘氏と『「婚活」時代』を出版、婚活ブームの火付け役に。少子化、働き方改革、女性活躍、ワークライフバランス、ダイバーシティなどをテーマとする。2018年1月、『広辞苑 第7版』に「婚活」が掲載される。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣官房 第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」有識者委員、内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。(撮影/竹井 俊晴、ほかも同じ)

白河さんの新著『ハラスメントの境界線』では、ハラスメントを放置することが個人のキャリアと組織の存続、どちらにとってもリスクになると書かれています。

白河氏(以下、白河):狭い日本社会の企業文化の中でこれまでは許されていたとしても、グローバル化が加速するこれからの時代には、決して許されるものではありません。ほかの国でハラスメントと訴えられる可能性もあります。

 本連載の1回目(「これもハラスメント!?その一線を越えれば、あなたのクビが飛ぶ?」)、2回目(「島耕作はほぼアウト!恋愛と勘違い、セクハラの境界線は?」)でも伝えましたが、ハラスメントがまん延するのは個人の問題だけではなく、それを許してくれた環境=周りの同僚や会社のせいでもあるんです。

 実際、セクハラが原因で会社を追われてしまったある男性について、同僚だった人たちは口をそろえて「あの人は確かに、スケべなおじさんキャラだったけれど、決して悪い人ではなかったのにね」と擁護する声が多かったと聞いています。

 しかし「あの人はそういうキャラだから」と周りが容認してきたことで、ブレーキを利かせるタイミングがなくなってしまって、結果的にセクハラは加速して、彼は会社を追われることになってしまった。

 ハラスメントを放置することは、その人がパワーを持ったときにものすごくリスクになります。その人が重職に就いていたら、会社としても大きな損失になるはずです。

 もし同僚にハラスメント気質の人がいるとしたら、できるだけ早い段階で注意してあげること。これが組織としてのリスクマネジメントにつながるはずです。