「オレがキムタクだったら」問題

30年も放置されてきたハラスメント問題を解決していく第一歩は何でしょう。

白河:まずは、セクハラ・パワハラを“個人の問題”にとどめようとする認識を改めるべきでしょうね。

 よく男性から聞かれるのは、「もしオレがキムタクだったら、許されるんでしょ?」といった意見です。セクハラめいたことを言っても、 イケメンなら許されるんだろう、と。

 また高圧的な指導をする人に対しても、「人によっては『あいつはそういう性格だから』で許される。結局はキャラクター次第なんだよね」と漏らす人もいます。

 彼らの気持ちも分からなくもないですが、「誰が言ったか」「どんな人が受け止めるのか」という属人的な問題にすり替えてしまうと、ハラスメントは永遠に職場からなくなりません。

 そういった声を聞く度に、私は常々、ハラスメントは“組織の病”であると伝えています。

 特にセクハラに関しては顕著です。セクハラ研究の第一人者である米イリノイ州立大学のジョン・プライヤー教授によると、セクハラをする人には、3つの共通点があるそうです。「共感力の欠如」「伝統的な性別役割分担を信じている」「優越感・権威主義」。

 ただし、これらの共通点を備えているからといって必ずセクハラが発生するわけではなくて、「それが許される環境(免責状態)に身を置くこと」が条件になる。

つまり、セクハラ要因の半分は当人によるのですが、残る半分は環境、組織の問題なんです。そう考えると、仮にそんな労働環境を野放しにいている組織がある場合、その責任は非常に大きい。

既に対策が整っている企業と遅れている企業で、格差はありますか。

白河:大きな差がありますね。やはり進んでいる企業は、トップやリーダーの危機感がとても高い。リスク管理としてはもちろん、労働生産性を高める成長戦略として、ハラスメント対策を位置づけている経営者も出てきています。

 また昨今の不祥事(金融不正やデータ改ざんなど)を見ていても、ガバナンスが非常に重視されていますよね。ガバナンスの専門家によれば「ハラスメントの通報などがしっかり報告、対応されることで、金融不正などの不祥事も防げる」ということです。ハラスメントを放置する企業は「ガバナンスが効いておらず、不祥事リスクがある」とも判断されます。

 米グーグルの「心理的安全性が高い組織は、生産性が高い」という報告も後押しになっているのではないでしょうか。

 セクハラ、パワハラの対応窓口を置くことは、既に法律で義務化されていますが、これまでは「開けてはいけないパンドラの箱」のように、対応は後回しにされていたのが現状でした。それが最近では、一件一件、通報者にヒアリングをして、対応するようになったとも聞いています。

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