カネカがパタハラで告発され、株価が下落。対応のまずさもあり、ハラスメント問題を放置することが、企業の大きなリスクであるという警鐘となった。
一方、個人の悩みも深い。「今日のワンピース、似合っているね。デート?」と女性社員をほめる。後輩のミスに「何をやっているんだ、しっかりしろ」と怒鳴る。「新婚なのに残業させて申し訳ない。子作りの邪魔だよな」と部下に謝る。
どれも相手を苦しめたり、嫌がらせをしたりするつもりがあったわけではない。むしろ、育成のために、またはコミュニケーションを円滑にしようと自然に出てきた言動だ。それなのにある日「ハラスメントですよ」と注意を受けてしまう――。
「自分はそんな悪いことはしてない」と思っていてもセクハラ・パワハラと言われてしまう。セクハラ、パワハラを巡って、日本の職場では大きな意識の“乖離(かいり)”が生まれている。
「一体、何がアウトなんだ!」
そう叫びたいビジネスパーソンも多いはずだ。これまでの常識はもう、通用しない。つい先日、パワハラにも企業に防止の義務が課され、セクハラは「行なってはならない」とする責務規定が法律に明記された。グローバルには、国際労働機関(ILO)で、職場での暴力やハラスメントを全面的に禁止する初めての国際条約が採択された。
私たちは、セクハラ・パワハラに対する意識を根底から刷新していかなくてはならない。
本連載では「働き方改革実現会議」の一員として法改正の渦中にいるジャーナリストの白河桃子氏が、セクハラ・パワハラの「境界線」について解説。これを読めばもうハラスメントの境界線に迷うことはなくなるはずだ。