『キングダム』とスタートアップの違いは?

作中に登場する将軍で、こんなキャラクターの部下がいるといいなと思う将軍はいますか。

:秦国の将軍で知略に長けた昌平君(しょうへいくん)と、秦の隣国・趙(ちょう)の大将軍・李牧(りぼく)の2人は魅力的ですね。特に昌平君は男前だし頭もいいしカリスマ性もある。ああいったタイプの将軍に任せることができれば、事業はあっという間に大きくなるんじゃないかな。

辻さんにとって『キングダム』はどんな存在なのでしょう。

:読めば、元気になるもの。経営に対しての気づきもあるけれど、何よりもまずエンターテインメントとして元気をもらえるから読んでいるんです。信がゼロから成り上がっていく様子や、信を支える仲間やライバル、それぞれのストーリーも面白い。次々に局面が変わる環境もまさにスタートアップの世界です。ただ唯一違う点もあるんです。

『キングダム』の世界とスタートアップの世界で異なるもの。それは何でしょう。

:僕たちは別に戦争をしているわけではない、ということです。

 マネーフォワードは競合他社と戦っているわけではありません。僕たちが唯一見ているのは、ユーザーです。ですから戦争とは少し違う。もちろん、ライバルに勝つことができれば、結果的にはシェアを伸ばせるかもしれません。けれど、ライバルを倒したからといって、ユーザーから支持を得られないようになれば、いつかは別のサービスに倒されてしまいます。

 逆に、どんな競争環境であっても、ユーザーにきちんと価値を提供できれば、結果的には受け入れてもらって、生きのこることができる。無理にライバルを倒す必要はない、ということです。

 一方で、企業経営でも必須だと僕が気づいたのは、信が飛信隊の兵に対して、厳しくルールを守らせるところです。戦争で勝ったからといって、負けた兵や村人に対して盗みや乱暴を働かないこと。

 これは企業経営で言えば、ミッションやビジョン、バリューをいかに社員一人ひとりに浸透させるか、ということではないでしょうか。特に僕が今、何よりも浸透させたいと思っているのが、バリューの1つである「User Focus」。先ほども触れた通り、ユーザーさんのために仕事をしているんだ、という意識です。

 どうしても人間というのは、提供者側の都合で仕事を進めたいと考えるようになります。自分が儲けたいとか、評価されたいとか、もしくは自分がこれを実現したいと思うから、とか。

 それは厳しく言えば、自分のエゴのために働いているわけです。そんな自己中心的なプロダクトは結果的には受け入れられません。だからこそ、「User Focus」という視点が何よりも大切なんです。

 ただ、こうしたミッションやビジョン、バリューというのは経営者である僕だけが、しつこく伝えても浸透するわけではありません。やはり、縦串も横串も必要になる。つまり僕以外にもマネジメント層や取締役、執行役員クラスが僕と同じ熱量でみんなに伝えていかなくてはならない。

 これがしっかりと浸透すれば、きっと飛信隊のような強いチームができるのだと思います。

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