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「国が滅びる」と率直に伝える効用

リーダーシップという観点で参考にしている人物はいますか。

森山:きっとほかの人も挙げているのでしょうが、やはり秦の国王・嬴政(えいせい)のリーダーシップはすばらしいと思います。

 周辺6カ国から攻め込まれた戦いで、秦は国が滅ぶか否かというギリギリの窮地に立たされます。合従軍の戦いから学ぶことは非常に多いのですが、何よりも僕にとって参考になったのは、嬴政が情報をオープンに開示したその姿勢です。

 彼は民兵たちを前に「勝てるぞ」という話を一切しませんでした。そうではなく、「負ければみんなが死ぬ」「秦という国は滅びてしまう」と率直に伝えています。

 うちの会社でも、これまでの歴史を振り返ると、赤字に転落するかもしれないという時期がありました。この時、僕は嬴政と同じように社員に向けてオープンに財務内容を明かしたんです。「今のうちの会社の事実がこうである」と。

 ほかにも社内の雰囲気が険悪になったことがありました。労働環境は厳しいのだけれど、業績が上向かず、みんなが不満をため込んでしまう。どうしてもベンチャー企業ですから、浮き沈みはあります。この沈んだ時、僕は社員みんなで、A4用紙に自分の本音を書いて、全員で見せ合うようにしたんです。

 「経営方針が見えない」「業務の負荷が重い」「業績が好転しない」……。全員が書いたものを一斉に壁に貼って、みんなが無言で見て回る。重苦しい雰囲気が漂います。何より経営者である僕にとってはつるし上げにされているのと変わりません。

 でも、このリアルな声があるから奮起できる。

 それも、98%は暗い言葉が並ぶんだけれど、残り2%には、空気を読まない社員が前向きなことを書いていたりするわけです。きっと雰囲気の悪い中でも本気で楽しく働いているんでしょうね。「オレはみんなが大好きだ」「未来を信じている」とか(笑)。その言葉にみんながほっこりしたり、涙したり。

 結局、本音を互いに伝えることで、みんなが変わっていった。嬴政が民兵を動かしたように、本音を共有して僕はCRAZYのみんなに前を向いてもらった。トップが情報を率直に伝えることは、危機感の共有には何よりも大切だと思います。

森山さんご本人がなりたい将軍像は誰でしょう。

森山:秦の国とはライバルになりますが、隣国・趙(ちょう)の大将軍・李牧(りぼく)が好きですね。

 僕は、李牧は戦争が好きじゃないと思うんです。例えば、秦国の大将軍・王騎(おうき)を討った後で、李牧は王騎の亡骸を辱めたりはしませんでしたよね。人間として極めて誠実です。それでいて、秦以外の周辺6カ国をまとめて、一斉に秦国を攻めるような大胆な戦略を実現したりもする。非常に魅力的ですよね。

 ただ、仕えている王は間違っているように感じます。李牧自身、秦の国王に対して「本当ならあなたのような王にお仕えしたかった」と漏らしています。

(©原 泰久/集英社)

 李牧はいっそのこと、秦に寝返った方がいいんじゃないか。

 僕はウエディング会社やほかの企業で、信用できない上司に仕えている優秀な人材を見ると、こう話しかけているんです。「仕える王は大切です。あなたの会社のトップが、将来のためにならない人物だと思うならば、ぜひCRAZYに来てほしい」と(笑)。嬴政が中華統一を掲げたように、僕はウエディング業界を足がかりに、世の中を変え、人々の人生を本当の意味で良くしていきたい。