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起業家から大企業の経営幹部、気鋭のプロフェッショナルらが愛読するベストセラー漫画『キングダム』(原泰久著、集英社)。累計発行部数は4500万部を突破し、この春には映画化もされた。

中国の春秋戦国時代を舞台に、類いまれなる武力を持つ戦災孤児の主人公・信(しん)が、中華統一を目指す秦の若き王・嬴政(えいせい)の下で、天下の大将軍を目指すストーリーに、多くのファンが魅了されている。

兵を率いるリーダーシップ、数千人、数万人規模の兵をまとめる組織づくり、部下を育てる人材育成、そして戦略や作戦、戦術の練り方など――。多くの学びが、『キングダム』には盛り込まれている。

本連載では、『キングダム』を愛読する起業家から大企業の経営幹部、気鋭のプロフェッショナルらに取材。『キングダム』から何を学び、どう経営に生かしているのか聞いた。

連載14回目に登場するのは、完全オーダーメードの結婚式を手掛け、ウエディング業界で大きな注目を集めるCRAZYの森山和彦社長。業界再編が進む一方で、CRAZYはこれから急拡大に向けてアクセルを踏む。その中で森山社長が最も参考にしている戦略家が、『キングダム』に登場する将軍の桓騎(かんき)だという。どういうことか、話を聞いた。

森山和彦(もりやま・かずひこ)氏
CRAZY代表。中央大学商学部を卒業後、2005年に人材コンサルティング会社に就職。6年半勤務し、2012年7月にCRAZY(旧UNITED STYLE)を創業。全社員で1カ月休んで世界一周したり、社員たちが一緒にランチを食べたりするなど、独自の組織運営を実践。2018年「働きがいのある会社」「働きがいのある会社 女性ランキング」をダブル受賞。2019年には、自社運営会場となる「IWAI」を東京・表参道にオープンさせた。(撮影/竹井 俊晴、ほかも同じ)

森山社長は、スタートアップ業界きっての『キングダム』ファンだと聞きました。

森山社長(以下、森山):『キングダム』については相当、詳しいですよ。「ヤングジャンプ」で第1話がスタートした時から、読んでいますから。当時の僕は社会人になって間もない頃。『キングダム』の主人公・信(しん)と同じ何もない環境からスタートしました。

 とはいえ、ぐんぐん成長する信に比べると、僕はまだ百人将。社員数はやっと100人くらいで、アルバイトさんなどを含めても300人くらい。信のような五千人将には、まだなれていません(笑)。

ビジネスパーソンとして、また経営者として、森山さんが特に学んでいる将軍は誰でしょうか。

森山:野盗の親分から将軍になった桓騎(かんき)ですね。

 僕たちはオーダーメードのウエディングプロデュース事業などを手掛けています。自分で言うのも何ですが、CRAZYっていい会社なんです。「世界で最も人生を祝う企業」と掲げていますから、外から見ても優しそうで、愛情のある会社であるようにも感じるはずです。それは間違いありません。ただ一方で、やはり経済的な成長もすごく大事です。

 桓騎の戦い方は、主人公の信のそれと比べると、非常に残虐なんですね。村人を見せしめに殺したりすることもある。ただ、それによって敵兵の戦意をくじいて早々に戦争を終わらせたりする。死人が少なくて勝つわけですから、違った側面から見れば、ギリギリまで死闘を尽くす信よりも、いいことをしている可能性だってあるわけです。

 一面的に物事を評価するのではなく、愛情だけでなく力や金も大切と考える。その視点を、桓騎から学んでいるんです。