バカだから思い切って挑戦できた

工藤:信はもの怖じしませんよね。天下の大将軍や秦の国王に対しても遠慮せずにずけずけと話をします。この姿勢がトップに好かれている。どうしても人間は「すごい人だ」と思ってしまうと恐縮しがちですが、バカだとスッと懐に入っていける。「この人はスゴイ」とか「この事業はとても難しい」と知らない方が思い切って挑戦できるし、学びを得ることもできるはずです。

 きっとあの時の僕も、同じだったのではないでしょうか。

 大企業の方々にとってみれば僕は頼りない経営者です。けれど「工藤はどうしようもないな」と思ってくれたからこそ、サポートしてくれたのかもしれません(笑)。

 今では大企業でもオープンイノベーションに関する取り組みが進んで、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を持つ企業も増えています。ベンチャーを受け入れる体制は確実に、以前よりは整ってきている。

 ただ当時はまだ多くの大企業がベンチャーとの付き合い方を模索していた時期です。普通に考えれば、創業1年未満のベンチャー企業だった僕たちが大手企業と連携できるはずはありません。

 けれど僕は信と同じように、根拠なんてなくても、「きっと大丈夫」と思っていました。だから実現できた。バカで無知であることがよかったんです。

『キングダム』の中で工藤さんが特に好きなシーンはありますか。

工藤:信が仕える秦の国王・嬴政(えいせい)はある時まで、商人の身分から出世をして、廷臣の最高職にまで就いた呂不韋(りょふい)と権力争いを繰り広げていました。

 結局は嬴政が勝ち、呂不韋は失脚します。この時、呂不韋の手下として秦国の宰相を務め、呂不韋が主導したクーデターに加担して牢獄に閉じ込められた学者が、李斯(りし)でした。彼はある時、嬴政を支える文官の昌文君(しょうぶんくん)にこう語ります。

(©原 泰久/集英社)
(©原 泰久/集英社)
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工藤:ecboも李斯のように、コアバリューを通して会社のあり方を定義しています。

 僕たちのコアバリューは、「Excite(ワクワクこそが最大の原動力)」「Communicate(夢を語ろう)」「Build(世界を変えていく仕組みを創り続けよう)」「Own your life(自分の人生を生きよう)」。この中でも僕が大切にしているのが、「Own your life(自分の人生を生きよう)」です。僕は、人は会社のためではなく、自分のために仕事をすべきだと考えています。

 自分が熱意を持ってできることと会社のベクトルが合っていると最高ですよね。逆に言うと、それが合わなくなった時が、会社を辞めるタイミングなのだとも思います。

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