「心ゆくまで」と言ってくれる部下の存在

ピンチの時に本領発揮できるチームをつくるために、三浦さんが普段から気をつけていることはありますか。

三浦:『キングダム』の中で、僕がもう1つ好きなシーンがあるんです。

 秦が隣にある大国の趙を攻めるのですが、この時、戦争の責任者を任せられた将軍の王翦(おうせん)は、戦いの要となる趙の城を偵察に行きます。離れた場所からその城を観察し、王翦はそこの攻略が相当困難であると察します。

 そして驚くことに、王翦は偵察に訪れた敵地の草むらにしゃがみ込んで、そこで次の一手を練り始めます。当然、敵兵に見つかるのだけれど、ここで王翦は、部下の亜光(あこう)に、ひと言だけ聞きます。

©原 泰久/集英社
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 「よいか?」「心ゆくまで」――。

 王翦は部下の言葉を信じて、背後で起こる激戦には一切気を回さず、集中して戦略を練り続ける。

 「いやいや、それ帰ってからやれよ」とも言いたくなるけれど(笑)、これぞまさに理想の信頼関係だなと思います。

 いいチームの条件はすごくシンプルで、「メンバーどうしの心理的安全性」が確保されていることです。

 この「心理的安全性」には2つあって、1つは後ろから刺されないという当たり前のこと。要は「こいつは裏切らない」という信用。もう1つが、「振り向いて確認しなくても、仲間も同じように戦っている」という信頼です。

 その点、王翦は亜光を信用し、信頼していた。「心ゆくまで」と言ってくれる部下がいることは、経営者として最高なことです。人間として「信頼」できたとしても、部下の実力を信じることができなければ「信用」はできませんから。

 飛信隊もうちの会社も、仲間を1人の人間としてパートナーシップを信頼し、ビジネスパーソンとしてもその実力を信用している。この2つが高いレベルで成立しているのがいいチームです。実際、僕が信用し、信頼できる人しか採用していませんし、その結果、会社を立ち上げて3年経ったけれど、まだ誰も辞めていないんです。

 クリエイターが立ちあげた会社は通常、どうしても創業者である社長がいなくなると終わってしまうことが多い。

 けれど僕は、自分が死んだ後でもGOが続いてほしいと思っています。そしてGOには広告業界とかを超えて、社会の変化と挑戦を支援する存在であり続けてほしい。だからチームづくりには相当こだわっています。

改めて、なぜビジネスパーソンが『キングダム』にはまったのだと思いますか。

三浦:人間の成長物語として、とても分かりやすいですよね。ファンはみんな、何かしら自分を作中のキャラクターに自己投影していますよね。もちろん僕もその一人です。起業家や経営者をはじめ、これほど多くのビジネスパーソンが『キングダム』に注目するきっかけの1つを作れたことは、1ファンとしてもとてもうれしく思っています。