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部下を信じて「生かす」こと

乃村:王翦ばかりではなく、『キングダム』に登場するベテランの将軍たちはみんな戦争になると、部下に指示を出すというよりも、配置だけして、信任していますよね。それは見習うべきだと思っています。

 例えばうちの役員メンバーも、それぞれの担当分野においては、僕にはかなわない能力を持っている。逆に言うとそう思ったから、役員をお願いしているわけです。だからこそ安心して担当業務を任せられるし、仮に任せて失敗したとしても、僕がやっても失敗すると思うから、何の悔いもありません。

 スタートアップが、スピード感をもって戦うには、経営者はそれぞれの部門のトップを信頼して、自律的に動かないといけない。逆に、それくらい信頼できるボードメンバーがそろわないなら、事業を始めてはいけないとすら、最近感じています。

 性格のいい人は、世の中に際限なくいます。一緒に働きたいと思える優秀な人も、たくさんいる。けれど事業を任せるなら、それだけでは足りません。本当に会社の一角を委ねられるほどの能力と信頼がある人なのか。

 そしてそういった人物で会社の四隅を固めるような布陣がつくれないなら、決して、事業を始めるべきではない。これは、身をもって学んだことです。

 信じて任せられる関係を構築できていないのに、能力の高い人物を社内に抱え込んでも、不毛な権力争いを生むだけでしょう。

 繰り返しますが、スタートアップは限られたリソースで戦わなくてはいけません。だからこそ、まずは柱になる人を集め、その人が最大限能力を発揮できる環境を整えること。つまり人を「生かす」こと。

 すると少ない兵でも戦略次第では勝てるようになる。それが、スタートアップ企業を経営するということだし、今、僕がすべきことなのだとも感じています。