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秦の国王と孫正義の共通点とは

麻野:リーダーシップという点では、僕は秦の国王・嬴政も好きです。中でも印象的なのは、嬴政が斉(せい)の国王・王建(おうけん)と直接、中華統一について語り合うシーンです。

 中華統一を語る嬴政に対し、王建は当初「空論だ」として取り合いません。いかに中華を束ねていくのか。秦が周辺の6カ国を統治すれば、征服された国は、征服した秦の下について、国民は強制的に“秦人”にさせられてしまいます。滅ぼされた人と、滅ぼした人。その間には必ず憎悪や悲哀が生まれると、斉の王・王建は語ります。

 これに対して嬴政は、「法」だと答えます。

©原 泰久/集英社

麻野:法の下にみんなが統治される国家をつくれば、征服した国も征服された国もありません。そうすれば、争いはなくなる。そんな未来を嬴政は提示したわけです。

 この嬴政の言葉に、王建は心を打たれます。ビジョンを示して仲間を増やす。これこそ、真のリーダーのなすべきことです。敵だと思える相手だって、1つ目線を高くすれば仲間になれる。物事を捉える視座を増やし、高めるような人が本当のリーダーではないでしょうか。

 もちろん戦いに強いというのは悪いことではないんですけど、本当のリーダーはやっぱり戦いをなくすんです。

 日本の実業界で言えば、ソフトバンクグループ創業者の孫正義さんは、嬴政のような人物だと思います。

 孫さんは、インターネットやAI(人工知能)の領域で今、敵と戦う戦略はとっていませんよね。むしろ将来有望な企業に次々に投資して、すべてソフトバンクグループにしようとしている。ライバルを倒すのではなく、孫さんの掲げる1つのビジョンの下に、すべてを仲間にしようとしているわけです。

 嬴政や孫さんのような視点は、僕たちの事業にも役立っています。

具体的にはどのような事業展開が「戦うのではなく、仲間にする」に当てはまるのでしょう。