新型コロナウイルス後のテレワークは、生産性が上がりにくい?
では現実ではどうなのでしょう。日経BP総合研究所イノベーションICTラボが、20年10月に「職場(派遣・常駐先を含む)で仕事に取り組む場合を100とした場合、テレワークでの生産性はどれくらいですか」という調査をしたところ、年代によって傾向は違いますが、「生産性が上がった」と回答しているのは20~45%程度だったと分かりました。
生産性が上がった | 生産性が下がった | |
---|---|---|
39歳以下 | 45.7% | 37.1% |
40歳代 | 24.1% | 42.6% |
50歳代 | 19.4% | 53.7% |
年齢層が高まるほど「生産性が下がった」とする割合が増え、50代で53.7%となっています。「だから年寄りはダメなんだ」と言いたくなるでしょうが、39歳以下でも3人に1人以上は生産性が下がったと回答しています。ZoomやSlackなどのテクノロジーを活用すれば、職場で仕事するのと同等のアウトプットがあって当たり前、というわけにはいかないようです。
前出の森川氏がまとめた「コロナ危機下の在宅勤務の生産性:就労者へのサーベイによる分析」によると、「あなたがふだん職場で行う仕事の生産性を 100 とすると、在宅勤務の生産性はどのぐらいですか」という質問を20年6月にしたところ、平均値60.6、中央値70という結果でした(n=3324)。
ただし、この数字は以前からテレワークをしていたか否かで大きく変わります。「以前から行っていた人」の平均値は76.8なのに対して、「新型コロナ後に始めた人」の平均値は58.1でした。以下はその分布図です。前者の山は90台にあるのに対して、後者の山は70程度にとどまっています。分布図による差は歴然としています。
ちなみにこの調査で、生産性を低くする要因と、高くする要因を調べたところ、設備の問題、環境の問題、加えてコミュニケーションの問題が影響していると分かりました。普段からテレワークに慣れている人は、こうした問題をクリアした上でテレワークに従事していると考えるべきでしょう。
つまり、従前からいわれていたテレワークによる生産性向上やQOL向上とは、テレワークを実施すれば「即向上」するのではなく、こうした阻害要因を除去できた上で実現できるのではないかと思うのです。例えば、自宅に設備投資をして、通信設備や環境を職場のように整えられるか否かとなると、万人にはなかなか難しいでしょう。
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