「Beyond GDP」の具体的な取り組みとしては、OECDの「Better Life Index」や英国の「Measuring National Well-being」、そしてフランスの「Mismeasuring Our Lives」などが有名です。

 OECDの「Better Life Index」では、住宅、収入、仕事、コミュニティー、教育、環境、市民参加、健康、生活の満足、安全、ワーク・ライフ・バランスといった11個の指標が設けられています。各指標のウエイト付けを自分で操作して(ホームページの画面右側のバーを左右で操作して)、横並びでOECD諸国を比較できます。

 しかし、いずれも複数指標の組み合わせを提案しており、GDPのような単一指標で、かつすぐに引用できるような使いやすさはありません。これでは当然ながら実用に耐えません。

 そもそも、データ分析の現場で「あなたの好きな尺度で、データを抽出してください」なんて報告はありません。「あなたが納得できる数字を選んでください」と言っているに等しいからです。

OECD「<span class="textColRed"><a href="http://www.oecdbetterlifeindex.org/" target="_blank">Better Life Index</a></span>」のホームページ。11の指標の重み付けを変えて、各国を比較できる
OECD「Better Life Index」のホームページ。11の指標の重み付けを変えて、各国を比較できる
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 GDPは指標として経済の一側面しか表せていない。しかし代替指標も浮かばない。新しい指標の開発は必要だが、イマイチ盛り上がらない……こうした状況が何十年と続いています。

 そもそもGDP第1位の米国にとって、自分たちの優位を示す指標の代替案をわざわざ作る意味はありません。また、GDP世界第1位を狙ってまい進中の中国も同じような理由で非協力的です。

 GDPは社会福祉を測る指標としては不適切かもしれませんが、だからといって経済を測る指標が不要というわけではありません。指標としてはボロボロだけど、GDPをなくすわけにもいかない。そのような状況にあるのです。

 もしもGDP第3位の日本が、OECDや英国、フランスと連携して「GDPに代わる経済指標」や「社会福祉を測る指標」の開発に成功すれば、世界から注目を集めるでしょう。

 もっとも、20年までに名目GDP600兆円を目指す政府・与党には難しいかもしれません。ぜひ野党の皆さんにまずは「Beyond GDP」に興味を持っていただければと思います。

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