意外と歴史の浅いGDPが抱える問題とは
GDPの歴史は古いようで新しく、1930年代にGNP(国民総生産)として生まれます。フランクリン・ルーズベルト政権下で、不況に関する正確な情報を得るため、全米経済研究所に勤めるサイモン・クズネッツが開発しました。彼は後の71年にノーベル経済学賞を受賞します。
42年には米国初のGNP統計が発表され、運用が始まります。47年にはヨーロッパ経済復興のために立案されたマーシャル・プランの援助金額をより効率的に配分するために、国連が中心となって経済測定の基準が作られることになりました。これが53年に登場したSNAです。
GDPはGNP時代も含めて、まだ約70年の歴史しかありません。それ以前の経済規模はこの時点から遡って作成されたものであり、計測の仕方が決まっているため、時間を遡るほど「データが無いからよく分からない」という結果になります。
加えて、GDPは堅固で完全なる指標とは言えず、誕生当初から様々な弱点を指摘されています。
1つ目は「GDPはどこまで経済の実態を捕捉できているか」。
GDPは全ての経済活動を正確に1つ1つ計測して出しているわけではありません。内閣府「国民経済計算の作成方法」によると、様々な統計を活用して推計を求めていることが分かります。別に、個人や企業のあらゆる経済活動を集計したわけではないのです。
つまり、この範囲を計測しますと決めたのがSNAであり、その結果がGDPです。SNAが定めた範囲外については、たとえどんな経済活動があったとしても計測されないのです。
そうした「割り切り」が、どのようなデメリットを招くでしょうか。2010年11月にガーナで起きた例が参考になります。
このとき、SNAを「1968年基準SNA」から「1993年基準SNA」にバージョンアップしたところ、ガーナのGDPはいきなり60%増となりました。アーカイブになりますが、Ghana Statistical Serviceが2010年11月3日に公表した「New Series of the Gross Domestic Product (GDP) Estimates」では、内訳が紹介されています。
ほとんどの年で、AGRICULTURE(第1次産業)、INDUSTRY(第2次産業)、SERVICES(第3次産業)のいずれも旧計測より新計測が伸びています。特に伸びているのはSERVICESです。
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