公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識”と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
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令和を迎えてもうすぐ2年がたつというのに、古い昭和を引きずっている人たちが一定数いらっしゃるようです。例えばいまだに「LGBT」に対する偏見はなくなりません。ちなみにLGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)の英語の頭文字からとったもので、「セクシュアル・マイノリティ」の人たちの総称です。
「LGBT」とは何なのか理解していますか?
2020年9月18日、埼玉県春日部市の井上英治市議(無所属)が同性のパートナーシップ制度を求める請願に対して「LGBTへの差別など市内に存在しない」「小学校や中学校でレズビアンやゲイについて教える必要はない、もっと分数とか漢字とか勉強することがある」などと発言しました。20年9月25日には東京都足立区議会の白石正輝議員(自民党)が少子化問題に関連して「日本中がLGBTになってしまうと足立区や日本が滅んでしまう」と発言しました(後に発言を謝罪、撤回)。
注目を浴びていないだけで、全国の地方自治体の議事録をクローリングすれば、同じような問題発言が数多く飛び出すのではないかと思うと、頭を抱えたくなります。
それにしても、白石議員の「日本人が全部L、日本人が男は全部G、次の世代生まれますか?」( 議事録のママ)といった発言や、19年1月3日の平沢勝栄衆院議員による「LGBTばかりになったら国は潰れる」発言とか、ありもしないことを前提にした危機発言をする理由がよく分かりません。私には「(映画で)ゴジラという生き物が暴れるのを見た。ゴジラが日本を襲ったらどうするんだ!」と騒いでいるように見えます。安心してね、あれはフィクションの映画ですよ。
こうした発言をする人の多くはよく、「LGBTに対する議論はタブー視されている」と言います。そうしたタブーを自分が打破したのだと言いたいようです。しかし、タブー視するもなにも、そもそも発言内容がとんちんかんなだけなのです。空想で起きもしない妄想を口走れば、批判を浴びるのはLGBTについての話に限りません。
そこで今回は、LGBTに関する様々な“ファクト”を整理してみましょう。
LGBTについて「いるんだろうけど、自分の周囲にはいない」といった発言を聞きます。「オネエなんでしょう?」「要はマツコ・デラックスさんみたいな人でしょう?」と思われている人もいるかもしれません。まず、あの方は”女装家”でもあり、LGBTの全てが女装家というわけではありません。
電通ダイバーシティ・ラボが19年1月に発表した「LGBT調査2018」の「セクシュアリティーマップ」が、LGBTとは何か(定義)を分かりやすく表現してくれています。それによると「ストレート」(異性愛者であり、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する人=下図の2と10)と答えた人以外をLGBT層としています。一般に、カラダもココロも男性ならLGBTではないと思いがちですが、下の図を見て分かるように、そうであっても、「好きになる性」が「男性」という場合だってあるのです。
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