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 公的統計データなどを基に語られる“事実”はうのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
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 長期化する中高年のひきこもり、通称「8050問題」(80代の親がひきこもり状態にある50代の子の面倒を見ている問題)に注目が集まっています。2019年1月には札幌で、82歳の母親と自宅にひきこもる52歳の娘が遺体で発見されました。死因は寒さと栄養失調による衰弱死でした。

 そんな中で、19年3月に内閣府から発表された「生活状況に関する調査(平成30年度)」において、40歳から64歳までの中高年層のひきこもりが全国で推定61.3万人いると推定され、大きな話題をよびました。

 報告書によると、「全国の市区町村に居住する満40歳から満64歳の人たち4235万人」から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人のうち、回答を回収できた3248人中47人(約1.45%)が、この調査におけるひきこもりの定義に該当すると分かりました。

 約1.45%に4235万人を掛けると61.3万人になります。100人の中高年がいれば1人はひきこもり、という衝撃的な結果です。

 ちなみに、この調査で定義するひきこもりは「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが家からは出ない」「ふだんは家にいるが近所のコンビニなどには出かける」という“狭義のひきこもり”に加えて「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」という“広義のひきこもり”も含みます。ただし「現在、なんらかの仕事をしている」「身体的な病気がキッカケで現在の状態になった」「専業主婦・主夫だけど、最近6カ月間に家族以外とよく会話した・ときどき会話した」人たちは除かれます。

 過去2回行われた、ひきこもりに関する調査(平成22年の若者の意識に関する調査平成28年の若者の生活に関する調査)は、15歳から39歳までを対象にしており、これまで中高年層のひきこもりの実態は謎のままでした。過去2回の調査を読むと30代の「ひきこもりの長期化」が顕著に表れており、実態解明は急務だったと言えるでしょう。

 しかし、この調査に対して「3000人に聞いただけで中高年のひきこもりが60万人なんて拡大解釈過ぎる」「たった1%なんて誤差みたいなものでいい加減」という意見もあるようです。果たしてそうなのでしょうか?