先ほどの内閣府の「生活状況に関する調査(平成30年度)」によれば、"広義のひきこもり"の方たちのうち、「生計を立てているのは主に誰か」を調べたところ、3分の1は父か母になっています。父母の持つ資金は年齢から考えれば「年金」か「貯金」でしょう。

“広義のひきこもり”の人たちの家の生計を主に立てているのは父親か母親
“広義のひきこもり”の人たちの家の生計を主に立てているのは父親か母親
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 親の死亡が明らかになれば生計の源が絶たれます。死亡届を出すメリットと、死亡届を出さないメリット、その両者をてんびんにかけたとき、後者が選ばれる可能性は否定できません。

 10年に年金不正受給問題が発覚して以降、いわゆる「高齢者所在不明問題」には厚生労働省が中心となり対応に当たっています。調べてみると11年2月に「昨年夏に把握した所在不明高齢者事案に関するその後の状況」が発表されて以降、5回の調査結果が報告されています。しかし15年12月の「年金受給者の現況確認の結果と差止め等の状況について」を最後に、報告は止まっています。

 果たして、こうした形でこの調査を止めて止めてしまっていいのでしょうか? 15年以降も年金の不正受給事件は発生しています。18年4月には父の年金を止められたら生活できないことを理由に遺体を放置し、年金を詐取したとして板橋区に住む女性が逮捕されています。ちなみに15年の「年金受給者の現況確認の結果と差止め等の状況について」では、調査時に75歳以上の方で、市町村が健在と確認できなかった 7207人を調べたところ、死亡が233人、行方不明が89人いたとしています。

 20年代、8050問題の当事者が「死亡届を出したら生きていけない」という理由でやむにやまれず犯罪に手を染める可能性は大いにあります。しかもそれは年に5件、10件というレベルではないでしょう。19年3月の調査結果からすると月に40件、50件のペースで発生してもおかしくないのです。さらに、今後、中高年のひきこもりが増えていけばなおさらです。

 厚生労働省では「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」と題した検討会において、複合的な課題に一元的に対応できる自治体窓口の創設など「断らない相談支援」の必要性を強調した中間報告がまとめられました。今後、財政支援も含めて検討されるようです。

 あの家にはひきこもりがいるらしい。子どもさん、なかなか顔を見ないよね。そんな噂話一つが、社会復帰を困難にすることもあるでしょう。そんな彼らに付き添い、盾になって守る行政、政治家、市民がいれば、8050問題はここまで深刻にならなかったのではないかとも考えています。

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