09年公表と、少し古いデータになりますが、東京大学の大学経営・政策研究センター「高校生の進路と親の年収の関連について」によると、両親の年収別の高校卒業後の進路は以下の通りでした。年収が高まるほど大学に進学するか浪人する比率が高まり、かつ就職する率が低くなります。

両親年収別の高校卒業後の進路
両親年収別の高校卒業後の進路
出典:東京大学 大学経営・政策研究センター「高校生の進路と親の年収の関連について」
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 また、19年に発表された内閣府の子供の貧困対策「子供の貧困に関する現状」によると、子どもの大学(専修学校等含む)進学率の推移は、ひとり親家庭、生活保護世帯など金銭的な問題が考えられる世帯は、全世帯に比べて相対的に低い結果となりました。

子どもの大学(専修学校等含む)進学率の推移
子どもの大学(専修学校等含む)進学率の推移
出典:内閣府「子供の貧困に関する現状」
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 本人が自らの意志で「大学に行かない」と選んだならともかく、「大学に行けない」と言わざるを得なかった。「学ぶ環境」が無く、適切に学業を修められなかった。これこそが貧困が与える影響でしょう。その結果、その家庭に生まれた子どもも相対的貧困に陥りやすくなる。結果、貧困は連鎖し、再生産されてしまう。

 これこそが「持続可能性が無い社会」なのでしょう。こうした状況を「学ばないおまえが悪い」と斬って捨てるほどの自己責任論者にはなれません。このような状況を放っておいてよいはずがありません。

捕捉率の把握を目的とした継続的な統計データは無い

 貧困から抜け出すための手段の1つは生活保護です。しかし日本は海外に比べて捕捉率(生活保護を利用する資格がある人のうち実際に利用している人の割合)が低いといわれています。

 日本弁護士連合会(日弁連)が作成したリーフレットでは、日本の捕捉率は15.3~18%としています。一方でドイツは64.6%、フランスは91.6%と高水準とされています。しかし少なくとも日本の数値は推測であり、真の実態は不明です。実は、捕捉率の把握を目的とした継続的な統計データは無いのです。

 旧民主党政権下の10年4月に、厚生労働省に「ナショナルミニマム研究会」が開催され、初めて生活保護の捕捉率の推計が公表されました。ただし「国民生活基礎調査」(07年)を用いた類推です。ちなみに、政権交代の影響か以降の捕捉率は公表されていません。

 生活保護を受給するには、「収入要件」や「貯蓄要件」(貯蓄残高が生活保護基準の1カ月分未満)のほかに、「就労要件」(働けるか否か)、家族による扶養義務者の有無(家族の中で扶養してくれる人がいるか否か)など、さまざまな要件をクリアする必要があります。これらのうち後者2つは「国民生活基礎調査」からは分かりません。

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