公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識”と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。

連載バックナンバーはこちら

 2020年9月15日、自民党総裁に就任した菅義偉を支える執行部が披露され、その顔ぶれの「高齢」さが話題となりました。

 総裁の菅義偉は71歳、幹事長の二階俊博は81歳、総務会長の佐藤勉は68歳、政調会長の下村博文は66歳、選挙対策委員長の山口泰明は71歳です。その顔ぶれをして「5G(爺)」と表現した方がいて、言い得て妙だと感心しました。ちなみに、その場にいなかった国会対策委員長の森山裕は75歳ですから、もはや6G(爺)です。

 幹事長、総務会長、政調会長のいわゆる党三役の平均年齢は71.67歳です。過去にさかのぼってみると「過去最高齢」の執行部です。ちなみに、最も若いのは1961年の池田勇人執行部(幹事長の前尾繁三郎は当時55歳、総務会長の赤城宗徳は56歳、政調会長の田中角栄は43歳で平均年齢は51.33歳)です。

 ただし、今回の党三役の平均年齢が高いのは、最高齢幹事長である二階俊博が引き上げているせいでもあります。過去を振り返れば2008年の福田康夫執行部(幹事長の麻生太郎は当時67歳、総務会長の笹川堯は72歳、政調会長の保利耕輔は73歳で平均年齢70.67歳)や、1978年の大平正芳執行部(当時、幹事長の斎藤邦吉は69歳、総務会長の倉石忠雄は78歳、政調会長の河本敏夫は67歳で平均年齢71.33歳)の方が、メンバーの年齢がおしなべて高く、より“G”感があります。

自由民主党結党以降の党三役平均年齢推移
自由民主党結党以降の党三役平均年齢推移
著者調べ(目安のために総理大臣名を入れてありますが、表示の関係上全ての総理大臣名を表示しているわけではありません)
[画像のクリックで拡大表示]

 調べてみて分かったのは、歴代執行部の平均年齢はおよそ60歳で推移していることです。その時々で上がったり下がったりしており、高年齢化が継続して進んでいるとは言い切れません。もっとも60歳は若いとは言えませんし、今回の“5G”を引き合いに出して問題視し、「日本にはもっと若いリーダーが必要」と考える方もいるでしょう。一方で、新しく米国大統領に就任するだろうジョー・バイデン(77歳、就任時は78歳)を引き合いに「若さも大事だが経験も必要」と考える方もいるでしょう。

 どちらも1つの真実ですし、どちらも正解ではあるでしょう。ただし、数字で定量的に表現すれば、また違った何かが見えてくるかもしれません。そこで現在の日本国憲法の施行後に発足した片山哲内閣以降の大臣の年齢を「ウェブスクレイピング」と呼ばれる手法を使って調べてみました。「R(アール)」と「Python(パイソン)」というプログラミング言語を使って、ウェブ上のデータを抽出・収集する方法です。

次ページ 過去の内閣は若かったのか