全4583文字

「子供を産む」と「仕事に就く」を両立させているのは“第3の変数”

 これらの結果を基に「女性の労働力率が高まるほど出生率も高まるんなら、もっと女性には働いてもらわないと!」と言うのは、乱暴な議論です。これは因果ではなく単なる相関だからです。女性の労働力率が高いと合計特殊出生率も高いとは言いましたが、女性の労働力率が高くなると合計特殊出生率も高くなるとは言っていません。ここは重要なポイントです。

 加えて、Kögel らの統計を用いた実証的な研究によると、実は「OECD諸国内で女性の労働力率と合計特殊出生率はいまだに負の相関関係にある」と分かりました。正の相関関係にあるように見えるのは、「負の相関を弱まらせる第3の変数が存在した」からだというのです。

 つまり依然として、女性は「仕事」か「子育て」のどちらかを選ばなければならない状況に置かれており、たまたま「第3の変数」が「仕事」と「子育て」のどちらも選べるようにしているにすぎないというのです。国によっては、第3の変数の力が弱いため「働く女性が増えても出生率は下がる」という結果になる可能性があるのです。

 この第3の変数については、独立行政法人・経済産業研究所の山口一男の論文(2005)が「仕事と家庭の両立度」、より具体的には「仕事と育児の両立度」と「職の柔軟性による両立度」の2つではないかと指摘しています。

 つまり第3の変数には、子供の面倒を見るための働きやすさと、仕事自体の勤めやすさの2つあるのでははないか、という指摘です。

 この前提に立った上で、山口論文では以下のような結論に至っています。

  • 「仕事と育児の両立度」と「職の柔軟性による両立度」は、ともに出生率を増加させるが、後者が与える影響が前者の2倍大きい。
  • 女性労働力率の増加が合計特殊出生率に与える負の影響は「職の柔軟性による両立度」に依存している。「仕事と育児の両立度」は関係していない。

 出生数を増やすための少子化対策として、託児所の充実や育児休業の拡大はもちろん大事なのですが、育児休業からの復帰のしやすさ、フレックスタイムや在宅勤務などの柔軟な働き方も欠かせないとの分析です。そして後者の柔軟な働き方が整わないと、出生率を減らす要因になるというのです。

 つまり少子化対策は、国や地方などの公共セクターだけでなく、民間企業の協力なしには成功しないと言えるのです。「職の柔軟性」は、民間企業の果たす役割が非常に高いのです。