公的統計データなどを基に語られる“事実”はうのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
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2019年10月7日、日本経済新聞が「出生数90万人割れへ 19年、推計より2年早く」と報道し、大きな話題を呼びました。これは厚生労働省が発表した人口動態統計の19年1~7月の出生数(速報値)が前年同期比で5.9%減の51万8590人になったことを受けたものです。このままいくと、19年の出生数は90万人を割る可能性が高いと推定したのです。
国立社会保障・人口問題研究所が17年4月10日に公表した推計(日本の将来推計人口[平成29年推計])では、出生数90万人を下回るのは21年としていました。想定より2年早い結果は、驚きをもって迎えられました。
将来推計人口を算出する際は、将来の出生推移および死亡推移について中位、高位、低位の3つの仮定を設けています。一般に将来推計人口として利用されるのが中位、上振れパターンが高位、下振れパターンが低位とされます。
想定結果 | 出生数高位推計 | 出生数中位推計 | 出生数低位推計 |
---|---|---|---|
90万人以下? | 101.3万人 | 92.1万人 | 83.6万人 |
今回の推定は、万が一を考慮した19年の出生数低位推計を下回ってはいないので、関係者は新聞のあおりには冷静で「予想より早いが想定の範囲内」と受け止めているかもしれません。ただし今のペースで出生数の減少が加速すれば、今後、出生数低位推計を下回る可能性もあります。
では、どうすれば出生数は増えるのでしょうか?
10代~40代の人口は減り続ける一方ですから、出生数が増えると考えにくいのが現状です。だからこそ、政治家から「女性はもっと子供を産め」という失言が出てくるのでしょう。
そもそも政府は男女雇用機会の均等、少子化対策、女性活躍推進などの政策を推し進めてきました。「男性と同じように働け!」と言ったかと思えば「子供を産め!」と言い、いよいよ最後は「活躍しろ!」と、女性に向けた施策をうってきました。
この中で「仕事に就く」と「子供を産む」ことは、一見、相反するようにも見えます。仕事に就くと子供が産みにくくなるし、子供を産むと仕事に就きにくくなるように思えます。しかし、本当にそうでしょうか?
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