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公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識”と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。

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 2020年9月3日、大阪市を廃止して4特別区を新設する「大阪都構想」の制度案が大阪市議会本会議で大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決されました。大阪府議会では8月28日に可決済みで、大都市地域特別区設置法に基づき15年以来2度目となる市民対象の住民投票が実施されることになりました。10月12日に告示され、投開票は11月1日です。

 住民投票は9月1日時点の選挙人名簿に登録された18歳以上の大阪市民約220万人が対象で、実は筆者もその1人です。5年前も投票に行きましたし、今回も貴重な1票を投じたいと思います。

 ところで、東京にいると大阪の「都構想騒動」について全く報道されていないことを実感します。大阪では朝から晩まで都構想の報道がされているのに、東京ではトランプ米大統領のコロナ感染、藤井聡太二冠対局時の「お昼ご飯予想」などが取り上げられ、都構想の「と」もない。東京の皆さんにとって大阪の報道と言えば、吉村洋文大阪府知事の「イソジン会見」ぐらいしか印象に残っていないでしょう。

 そこで今回は15年の住民投票の内容を振り返りつつ、現在、都構想を大阪市民がどう考えているかを、最新の世論調査を基に確認したいと思います。

2015年の住民投票を振り返る

 15年5月17日に行われた住民投票は有権者210万4076人中、投票したのが140万6084人、投票率は66.83%と極めて高い結果でした。大阪市長選挙の投票率と比べると、ここまで高いのは1963年(投票率68.14%)まで遡る必要があり、関心の高さがうかがえます。

 住民投票の結果、反対70万5585票、賛成69万4844票とわずか1万741票差で反対が上回りました。事前の予想では、反対派優位でしたが、投票直前に賛成派が巻き返して肉薄した形です。反対派からすれば、まさに「薄氷を踏む勝利」と言えるでしょう。

 ただし、大阪市24区別の内訳を見ると、大きな偏りが見て取れます。反対派と賛成派のどちらが優勢だったのか、その結果を区ごとにヒートマップで表現しました。反対派が上回った区を黄色、賛成派が上回った区を水色で示しました。5%を超えて反対派・賛成派が多いと色が濃くなります。

2015年住民投票の大阪市24区投票結果
反対派多数は黄色、賛成派多数は青色、数字は反対派の割合 大阪市「特別区設置住民投票における年齢別投票行動調査の結果について

 24区中、賛成派多数は11区、反対派多数は13区でした。この結果をして評論家の古谷経衡さんが「『大阪都構想住民投票』で浮き彫りになった大阪の『南北格差問題』」と表現されました。要するに上のヒートマップから、大阪は南北で違う顔を持つ格差のある都市だと言いたいようです。しかしそうならば、北にある淀川区の下町、十三はどうなのか、反対派の多い天王寺区にある文教地区の真田山町や高級住宅地とされる真法院町、同じく高級住宅地として有名な阿倍野区の帝塚山はどうなのかと感じます。こういう論評が公開され評価されてしまうほど、この薄氷の勝利に誰もがその「理由」を求めました。