公的統計データなどを基に語られる“事実”はうのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
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これまで何度も衝突を繰り返してきた日韓関係ですが、今度ばかりは深刻さが異なります。
2019年7月、安全保障上の理由による日本の輸出管理の厳格化を発端に、日韓GSOMIA(軍事情報に関する包括的保全協定)が破棄されるなど、単なる経済戦争にとどまらない勢いで関係が悪化しています。
これまで多くの専門家が経済面、軍事面に与える影響を分析してきました。しかし、見渡してみると「観光」に与えた経済的影響は数字できちんと分析されていないようです。
報道によると、韓国人観光客が多く訪れていた大阪や長崎県対馬などの観光地では、飲食店やホテルに大きな影響が出ているそうです。果たして、どれくらいの被害なのでしょうか?
訪日韓国人数の減少による影響をどうやって調べるか
日本政府観光局(JNTO)の訪日外国人数(速報推計値)によると、19年8月の訪日韓国人客数は30万8700人と、前年比48%減(28万5000人減)の落ち込みを示しました。また10月中旬に明らかになった9月の最新のデータでは、20万1200人、前年比58%減(27万8000人減)とさらに厳しい数字となっています。
7月の時点では日本に訪れる外国人客数のTOP3は1位が中国、2位が韓国、3位が台湾でした。しかし韓国の大幅な減少により、8月には2位に台湾がランキングされるほどの大きな異変となりました。9月にはその差がさらに広がっています。
2019年7月 | 2019年8月 | 2019年9月 | |
---|---|---|---|
中国 | 105万0500人(1位) | 100万0600人(1位) | 81万9100人(1位) |
韓国 | 56万1700人(2位) | 30万8700人(3位) | 20万1200人(3位) |
台湾 | 45万9200人(3位) | 42万0300人(2位) | 37万6200人(2位) |
では、前年比で減少した約27万8000人分が「日韓関係悪化」による影響と見ればよいのでしょうか。ここは、もう少し詳細に見たいと思います。
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