電子政府ランキングを下げた「HCI」はなぜ低いのか

 そもそも総就学率とは、「年齢を考慮しない総就学者数」を「教育制度計画上の相当年齢人口」で割ったものです。いわゆる「就学世代」以外の人たちがより多く学んでいればいるほど、総就学率は高くなります。義務教育や基礎教育を終えてからも、教育機関に戻って知識やスキルを高めることを「リカレント教育」といいますが、これに力を入れている国の総就学率は高くなります。実際、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、スウェーデンなどリカレント教育に熱心な国は総就学率が100%を超え、HCIの上位を占めます。

 日本の「学校」は同年齢志向が極めて強く、大学=若い人が行く場所と思われている傾向にあります。そのため、総就学率は諸外国に比べて低くなる特徴があります。ただ、日本では企業が研修などの位置づけでリカレント教育を行うことも多いので、一概にリカレント教育が弱いとも言い切れません。総就学率の低さは国民性や社会性の違いということでしょう。

 確かに総就学率だけで見れば日本は実際に低いです。ただ、それがHCIにダイレクトに反映されてしまっているので「そうだけど、そうじゃないんだよな」と反論したくなります。

 ちなみに、日本の電子政府ランキングはアジア圏では韓国、シンガポールに続く第3位であり、トップランナーとなっています。E-Government Survey 2020ではデジタル・ガバメント実行計画総合科学技術・イノベーション会議の存在に触れ、e-gov.go.jpやdata.go.jp、geps.go.jpなどプラットフォームが充実している点が強調されています。

 いずれにせよ、UNDESAが作成した電子政府ランキング自体が、「政府」のデジタル化状態そのものを指していないことはご理解いただけたと思います。デジタル先進国だと言われる中国が上位にランクインしていないのも、HCIが低いからです。その巨大な人口ゆえに、平均を求めると実態と大きくかい離するのです。

中国のEGDI、OSI、TII、 HCI
中国のEGDI、OSI、TII、 HCI
出典「E-Government Survey 2020」
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 まだパイロット版ですが、E-Government Survey 2020には「電子自治体ランキング」が載っています。このランキングは指標としてOSIしか使っていないせいか、中国からは上海が9位でランクインしています。日本では東京が24位に入っています。トップとボトムを混ぜた平均となる国レベルのランキングも大切ですが、トップに着目するのも大事でしょう。

都市別電子自治体ランキング(2020年)
都市別電子自治体ランキング(2020年)
出典「E-Government Survey 2020」
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