他にも米国のような例外はありますが、それらを除けば、1~3月期と同様に感染者数が多い国はGDPの前期比減少率も高いと分かります。

 当たり前といえば当たり前ですが、累計感染者数が多い国ほど、経済に悪影響が出ています。言い方を変えれば、経済的支援や補助など、どれほど経済対策を実施しても、感染症対策を徹底すれば経済活動が縮小し、経済の立て直しは難しくなります。バケツに水を注いでも、そのバケツに自ら穴を開けているようなものですから、簡単には水は溜まりません。これではなかなか経済成長がプラスに上向かないでしょう。

 経済対策の中には、Go Toキャンペーンのように人の移動を促すことで、経済活動を活発にさせようとするものもあります。ただ、こうした経済対策は、経済の立て直しに貢献する一方、感染対策を緩めることで感染を拡大させかねません。ひいては経済活動の立て直しに悪影響を及ぼす可能性があります。

 私自身もこれまで「今はwithコロナの時代だ」と考えてきました。しかし、中途半端に新型コロナウイルスと共存しても、徹底して感染拡大の抑え込みに注力しない限り、経済を元に戻すことは簡単ではないと考えを改めました。すなわち、本当の経済対策は「ワクチンを待たずとも新規感染者数を限りなく0に近づける」ことではないでしょうか。行動や営業の規制以外の方法も含め、あらゆる手段を講じるべきだと考えます。その先に「通常の経済活動」が待っているのです。

 世の中には様々な人がいて、中にはゼロリスクバイアス(あるリスクの危険性をゼロにすることを優先して、他の重要な問題をないがしろにする傾向)の方もいます。

 感染するリスクを完全に0%にはできないとして、政府は「感染のリスクもあるけどGo Toで経済対策だ!」と発表しました。確かに、0.001%のリスクを0.0001%まで下げるために経済活動を止める必要かあるかといわれれば、そうは思いません。しかし、ゼロリスクバイアスをもっていなくても、現在の対策が万全だと思う人は少ないでしょう。だからGo Toに賛同できないと感じる人も多いのです。その心理的なモヤモヤが「外に出たくない」「家に居た方が安全」という行動につながります。そうなると一向に消費は上向きません。

 もっと感染者を減らすことに力を注ぎ、感染リスクを下げない限り、経済は上向かないでしょう。

「政府の対応の厳格指数」から見た日本の位置付け

 ところで、日本のコロナウイルス対策の厳しさは世界的に見てどのような位置にいるのでしょうか。英オックスフォード大学が運営する「Our World in Data(データで見る私たちの世界)」では「Government Response Stringency Index(政府の対応の厳格性指数)」なる指数が発表されています。学校の閉鎖、職場の閉鎖、パブリックイベントのキャンセル、集会の制限、公共交通機関の運行停止、広報キャンペーンの多寡、在宅の推奨度、移動の制限、旅行の禁止、感染が疑われる場合の検査体制、感染が確認された場合の追跡調査などの指標に基づく複合的な測定であり、0~100の数値(100が最も厳密)で表現されます。

 中国、ドイツ、インド、アイルランド、日本、米国で「厳格性指数」の推移を見てみると、インドや中国はかなり厳しく、赤い線で示した日本が最も緩いと分かります。ただし、厳格性が高いインドで感染拡大が止まらないという例もあります。この指標が対応措置の妥当性や効果を表しているわけではないことには注意すべきでしょう。

1月1日~8月31日における厳格性指数の推移
1月1日~8月31日における厳格性指数の推移
オックスフォード大学 「Our World in Data(データで見る私たちの世界)」
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 新型コロナウイルスは地域によって重症化のしやすさや感染力などの特性が異なるようなので、他国との比較は難しいですが、日本は諸外国に比べて「緩やかな制限」「感染者数の緩やかな増加」「GDP成長率の緩やかな減少」という状況におかれています。

 アジア圏の国・地域とも比較してみましょう。これを見ると台湾を除く他国の大半が、日本(赤線)より厳しい姿勢を続けていることが分かります。

1月1日~8月31日における厳格性指数の推移(アジア)
1月1日~8月31日における厳格性指数の推移(アジア)
オックスフォード大学 「Our World in Data(データで見る私たちの世界)」
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 厳格性が高ければ高いほど感染の広がりを抑える効果は期待できるでしょうが、経済活動に与える影響は耐えられないほど大きくなるかもしれません。さじ加減が非常に難しい。しかも、厳格性が高いから確実に感染を抑え切れるとは必ずしもいえないのです。

 いずれにせよ、日本がおかれている緩やかな制限、緩やかな感染増、緩やかな経済の落ち込み、という状態を是とするか非とするかが本来は総裁選の論点の1つだったはずです。しかし、「菅さんはパンケーキがだぁ~い好き」という報道や、公文書の偽装・隠蔽体質を引きずる菅氏の総理就任には反対、などの声にかき消されてしまったと筆者は感じました。

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