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 予測が外れること自体は、データ分析の世界ではよくある話です。今の数字を元に予測を立てる場合、「今の延長線上に未来がある」ことを前提としています。したがって、当初想定されなかった大きな変化が起きると予測は外れます。

 こうした予測外れをもたらす 「大きな変化」の1つとして考えられるのが「人手不足」の深刻さです。背に腹は代えられず、賃金が上がっても労働者を雇わざるを得ない。その結果、就業率を強く押し上げている可能性が考えられます。

 ただし、労働市場が競争状態にない場合、人手不足だったとしても最低賃金ギリギリで雇用されてしまう可能性があります。このことが分かりやすい例が最低賃金がほぼ同じ愛媛県と青森県の比較です。

 以下の図は、中央最低賃金審議会に提出された賃金分布に関する資料(短時間労働者の時間当たり賃金分布)からの抜粋です。分布データは「平成30年賃金構造基本統計調査特別集計」を元にしています。グラフ内に記載されている円表示は平成29年度最低賃金額です。

愛媛県と青森県における賃金分布と最低賃金

 分布を見ると、愛媛県の最頻値は800~809円であり、分布の山が最低賃金よりも高いことが分かります。一方、青森県の最頻値は最低賃金ギリギリの730~739円を指しています。

 最低賃金よりも高い時間給が出る会社で働けるならば、大勢の人がその選択肢を取るでしょう。そうではなく、分布の山が最低賃金に集まるということは、経営者に「他の会社より良い条件を出さないと人が集まらない」というプレッシャーがあまりないということです。労働市場が競争市場になっていないと、こうしたことが起きます。

 このような状況においては政府が最低賃金を上げるという選択肢が極めて有効だと言えるでしょう。最低賃金を上げるとしても、どのような場合に効果を上げるのかという議論も大切なのです。