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公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。

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 2020年8月28日、健康問題を理由に安倍晋三首相が辞意を表明しました。6月の検診で持病の潰瘍性大腸炎の再発の兆候が確認され、8月上旬には再発が確認されたことがキッカケだと辞意表明の会見で語りました。

 長期にわたる政権運営に対する謝意を記すとともに、まずは治療、療養に専念していただければと考えています。任期満了や選挙、スキャンダルではなく、自分の体調による退任はさぞじくじたる思いがあるでしょう。

 急激な体調悪化をもたらした理由は様々な臆測が飛び交っています。時期的には「新型コロナウイルス対応」をめぐる過労があったのではないかと推察します。麻生太郎副総理は、慶応義塾大学病院で検査を受けた安倍首相の体調について、次のように述べました

問)今日のテレビ会議のことではないんですが、国民の関心事なので1つ伺いたいんですけれども、総理が日帰りで検診をされました。このところの総理の体調をめぐっては、例えば甘利さんなど与党の中からも気遣う声が出ています。大臣はおとといも私邸で1時間ほどお会いになっておられると思いますが、現在の総理の体調についてどのようにご覧になっておられるか。

答)何日休んでいないんだっけ。

問)147日とかと。

答)147日間休まず連続働いたら普通だったらおかしくなるんじゃないの、体調としては。当たり前のことなんだと思いますから、休まれる必要があるということは申し上げたということで、ちゃんと自分で、健康管理も自分の仕事の1つですから、休んだからけしからんとか言われたからって関係ないじゃん。自分で体調管理しなきゃしようがないんだから、だからそういうようなことだと思いますけどね。

麻生副総理記者会見の概要(令和2年8月17日)

 麻生副総理は、安倍首相の健康問題を「連続勤務日数147日」を引き合いに出して説明しました。確かに、首相動静を読む限り、安倍首相は新型コロナウイルスの対応に追われて1月26日から6月20日まで147日間連続で働いていたという事実があります。それが体調悪化の引き金になった可能性はあるかもしれません。

 であれば、147日間連続勤務で体調が“普通だったらおかしくなる”とするならば、周り(特に麻生副総理)が連続勤務を放置したのは問題ではないでしょうか。それにこれだけ連続勤務をしてるなら、「休んだからけしからん」なんて言う人はいないはずです。私はむしろ「休ませなかったのはけしからん」と言いたくなります。

 連続勤務に目が行きがちですが、その後の休みはどうだったのでしょう。6月21日の休暇で連続勤務は途切れましたが、その後、6月の休みは28日の1日のみでした。安倍首相は7月中旬ごろから体調に異変を生じたと会見で語りましたが、その7月は19日、23日、25日、26日の4日、そして8月は2日、10日、16日、17日、18日、22日、23日の7日と休みが増えています。体調不良を反映してのことだと思われます。もっとも、それとて一般人に比べれば、休みが多いとはいえない程度のものではありますが……。

 本来であれば体調は万全であることが望ましいものの、持病があるから首相になれないなんてことはありません。昔、脳出血による後遺症をもった鳩山一郎が総理に就任した例もあります。今後、何らかのハンディキャップを背負った政治家が総理に就任する可能性だってあるでしょう。見過ごされてきたかもしれませんが、今まで以上に首相の体調管理は重要課題のように思えます。

 そこで、麻生副総理が言及された“普通だったらおかしくなる”147日間連続勤務は具体的にはどれくらい負荷が大きかったのかについて、量的な検証を試みました。