分母である「国の家計最終消費支出」とは、実はGDP(国内総生産)の内訳の一つで、個人企業を除いた消費主体としての家計の新規の財貨・サービスに対する支出を意味しています。家の財布から支払われたお金の総計と理解すればよいでしょう。

 分子である「キャッシュレス支払手段による年間支払金額」とは、国際決済銀行の発表しているデータを参照して、電子マネー決済額とカード決済額(電子マネーを除く)の合計を意味しています。非現金決済の総計と理解すれば良いでしょう。

 それで算出されたのが「18.4%」ですが、いくつかの理由で非常に違和感を覚えます。

 1つ目。家計最終消費支出には「持ち家を借家とみなした場合に支払われるであろう家賃」を意味する「持ち家の帰属家賃」が含まれます。「みなした」とある通り、実際には支払い行為がありません。日本では、2015年度の年次GDP(名目)のうち家計最終消費支出は約293兆円、うち持ち家の帰属家賃は約50兆円あります。これを除くだけでキャッシュレス決済比率は「18.4%」から「22.2%」程度、約4ポイント上昇します。

 2つ目。国際決済銀行が発表している数字には、法人向けクレジットカード分も含めた、あらゆるカード支払いが含まれています。経営者の中には、個人カードで事業会社分の支払いをしている人もいるでしょうが、これらも含まれています。「家計に限る」という絞り込みができないのでやむを得ませんが、もし家計だけの支出に絞り込めたなら、各国の決済比率はもっと低くなると考えられます。

 なお、韓国は統計が整備されていて、コーポレートカード分を取り除けます。その数字で計算すると、韓国のキャッシュレス比率は89.1%から67.8%と21.3ポイント減少します。

 3つ目。「キャッシュレス支払手段」とは言いますが、銀行口座間送金が含まれていません。銀行振り込みもキャッシュレス支払いといっていいのではないでしょうか。18年11月に行われた金融庁金融審議会では「キャッシュレス決済に関する指標」が紹介され、3大メガバンクの個人給与受取口座等からの出金が年間約85兆円で、そのうち現金は45.6%、すなわちキャッシュレス決済が「54.4%」だと公表しています。こちらの数字もあくまで3大メガバンクですが、かなりの金額が「キャッシュレス」で決済されているはずです。

個人の給与受取口座等からの出金状況(「キャッシュレス決済に関する指標」より)
個人の給与受取口座等からの出金状況(「キャッシュレス決済に関する指標」より)

 この3点から鑑みて日本の「18.4%」や中国の「60.0%」という数字が、そもそもB2Cにおけるキャッシュレス決済比率と言えるのか議論が必要です。余分な数字が含まれているということになります。