話を戻して、以下に5歳区切りで平均余命を掲載します。

平均余命(令和元年)
平均余命(令和元年)
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 60歳男性の平均余命は、23.97年です。ではおよそ83~84歳で皆死ぬかと言えばそんなことはなく、85歳の平均余命は6.46年、90歳の平均余命は4.41年と続きます。つまり、平均余命とは「この年まで生きられた人は、平均ではこの年数生きられる」目安だというふうに捉えればよいのです。ですから、自分の余命を知りたければ、自分の年齢の平均余命を見ればよいことになります。

 つまり、先ほど紹介した『寿命図鑑』の「日本人の寿命」も「0歳の平均余命」だと考えれば、鎌倉、室町時代の平均寿命が「10~20代」の意味が分かります。実際にはその年代でほとんどの人が亡くなっていたというわけではないのです。最近では、資料がほとんど残っていないものの、江戸時代に関しての研究が進み、推測に推測を重ねたものとはいえ、特定の集落における平均余命の推計を行った論文がいくつか出ています。

 例えば「江戸時代農村住民の寿命」(小林和正、1956年)という研究では、信濃国伊那郡虎岩村の1812~15年における生命表が作成されています。

信濃国伊那郡虎岩村の男性の生命表(1812~15年)
信濃国伊那郡虎岩村の男性の生命表(1812~15年)
「江戸時代農村住民の寿命」より。平均余命は右端の列
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 他にも「19世紀初期の庶民の生命表-狐禅寺村の人口・民政資料による-」(長澤克重、2006年)では、陸奥国磐井郡狐禅寺村の1810~21年における生命表が作成されています。

陸奥国磐井郡狐禅寺村の生命表(1810~21)
陸奥国磐井郡狐禅寺村の生命表(1810~21)
「19世紀初期の庶民の生命表-狐禅寺村の人口・民政資料による-」より。平均余命は右端の列
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 20~24歳の男性の平均余命は小林論文では40.8年、長澤論文では42.8年と2つの村でほぼ変わりありません。20歳過ぎまで生きていた人なら、60歳ぐらいまで生きられるでしょう、という意味合いになります。もっとも現在は男性の平均余命は20歳では61.77年、25歳では56.91年(いずれも令和元年生命表)ですから、それに比べれば短いことに変わりはありません。

 とはいえ、長生きする人は、長生きしています。考えてみれば、江戸時代に活躍した「画狂老人卍(まんじ)」こと葛飾北斎はおそらく88歳、島津義弘84歳、毛利元就は74歳まで生きています。徳川15代将軍は平均51歳で亡くなっていますが、うち7代将軍家継は8歳、13代将軍家定は35歳、家茂は20歳で亡くなっており、3人を除けば死亡時の年齢は平均すると59歳にまで上がります。

 今も江戸時代も、長く生きる人は長く生きているのです。

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