明治以前の平均寿命は?

 平均寿命を計測するには、人口統計を基に作られる「生命表」と呼ばれる統計表が必要になります。日本では国勢調査のデータを利用しており、第1回生命表の作成が1891~98年にかけてなので、言い換えればそれ以前の「平均寿命」はよく分からないのです。

 ちなみに生命表の原型は、英国のジョン・グラントが、ロンドンの教会にあった死亡調書を調査して、人間の寿命の分布を客観的に記述した『死亡表における自然的および政治的諸観察』(1662年)が始まりとされます。以降、様々な調整が行われ、信頼に足る生命表が生まれるのは1800年代となります。

 つまり、世界においてもはっきりとした平均寿命が分かるのは、たった100~150年程度でしかありません。それでも、様々な研究者が過去の生命表の作成に心血を注いでいます。その結果の一部が『寿命図鑑』(いろは出版)にまとめられています。

歴史的に見た平均寿命の推移
歴史的に見た平均寿命の推移
『寿命図鑑』の「日本人の寿命」より作成
[画像のクリックで拡大表示]

 それによると、平安時代には、30~40歳にまで上昇した平均寿命がその後、再び低下した理由を、「天候不順で農作物がほとんどとれない」「争いごとの多さ」と説明しています。そして同書には昭和以前の平均寿命が40代、鎌倉、室町時代では10~20代という衝撃的な事実が示されています。これでは、家庭をつくる間もなく死んでしまうではありませんか。

 昔の人は体が弱かったのでしょうか? それとも、今の環境が異常で、人間は急に長寿へと進化し始めているのでしょうか?

「平均寿命」に対する勘違い

 ご存じかと思いますが、そもそも平均寿命とは「その年に亡くなった人の平均年齢」ではありません。2019年の平均寿命が男性で81.41歳だからといって、2019年に亡くなった男性の平均年齢を計算すると81.41歳になる、ということではないのです。

 実際には「平均寿命」というのは、「0歳時における平均余命(ある年齢の人々が、その後何年生きられるかという期待値)」という意味です。言い換えると「0歳児が何歳まで生きられるかを統計的に予想した数字」だと言えるでしょう。

 ちなみに、日本の生命表には「10万人が生まれたとき、ある年齢に達するまで何人生存し、その年齢の内に何人が死亡するか」という数値も時代別、男女別に計算されています。それによると昭和30年(1955年)では、65歳の生存割合は男性で61.8%、女性で70.6%となっています。これに対し、令和元年(2019年)ではそれぞれ、89.6%、94.5%です。