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「椋鳥と 人に呼ばるる 寒さかな」(小林一茶)

 冬になると奥羽や信濃から来る出稼ぎ者を、江戸っ子は「やかましい田舎者の集団」という意味合いで「椋鳥(むくどり)」と揶揄(やゆ)していたそうです。15歳で信濃を後にした小林一茶も、その一人でした。寒い冬に、のこのこと出稼ぎに来た田舎者への蔑みに対する、一茶の心境がうかがえます。

 当時は江戸に多くの労働者が奉公に出ていました。しかし不況になると真っ先に職を失い、住居も失う者が少なくなかったようです。これが現代なら、政府が「失業者対策」として様々な支援をしていたでしょう。

 ところで「失業者」とは具体的に誰を指すのか、明確な条件があるのをご存じでしょうか。総務省統計局「労働力調査 用語の解説」によると「1.仕事がなくて少しも仕事をしなかった」「2.仕事があればすぐに就ける」「3.仕事を探す活動や事業を始める準備をした」という3条件を満たす者が「失業者」だと決まっています。

 したがって、景気が悪くなり仕事が見つかりにくくなったからと就職活動をやめると、無職でありながら「失業者」として計上されない、という変な状況が生まれます。

 しかしながら失業率を厳密に定義するのは、経済状況の良しあしを測り、政策にいかす指標だからこそ。為政者が失業者数(率)に気を配るのは重要です。安倍首相は2019年3月25日の参議院予算委員会で、次のように述べています。

…失業率につきましても完全雇用に近い状況となっているということであるわけでございまして、そういう意味におきましては、いわば仕事がある、働きたい人は仕事があるという状況はつくっていると、こう思います…(略)。

 確かに、過去にさかのぼって失業率の推移を見てみると、ここ約2年は2%強を横ばいで推移しています。18年におけるOECD平均の失業率が5.3%ですから、かなり低いと分かります。……しかし、それでもう問題はないのでしょうか?

月別完全失業率推移(1973年~2019年、季節調整後)