全5020文字

国によって異なる移民の定義。具体的に「誰」なのか?

 「移民」の数え方について、世界で合意された定義はありません。したがって各国が発表している数字は微妙に意味が異なります。それほどセンシティブな話なのだと推察します。

 一般によく引用される1997年の国連事務総長報告書では「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12カ月間当該国に居住する人」を移民と定義しています。また国際連合広報センターでは「定住国を変更した人々を国際移民とみなす」「3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住」と定義しています。

 そうなるとケースによっては、留学生、仕事での赴任者、長期旅行者も「移民」となり得ます。ちなみに、定義には国籍に関する言及はないので、日本で生まれ育った外国籍保有者は、通常の居住地が日本のため「移民」ではなくなります。

 これらの定義に従うと、安倍首相の言う「定住しない外国人」も実際は「移民」になるのですが、共通認識となる定義がないため、移民議論は「私はそうは感じない」「日本政府はそのような立場をとらない」といったオピニオン論争に終始してしまいます。実際、国会論戦でそうした場面を多く見かけました。

 そこで、いったん「移民とは何か」論争は脇に置いて、数字に目を向けます。

 まず、2006年以降の在留外国人の推移を確認します。08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災で少し減少しましたが、12年を底に7年間で約1.4倍に増加して、19年末には293万3137人を記録しました。

在留外国人の推移(2006年~19年)
「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」(法務省)

 在留外国人と聞くと、主に在日韓国・朝鮮人や在日台湾人の方々など特別永住者の方が半数を占めているイメージがありますが、実態は大きく異なります。特別永住者は19年末時点で31万2501人、全体の11%ほどでしかありません。

 実際には、中長期在留者と呼ばれる外国人が大半です。中でも永住者、技能実習生、留学生など上位3つの在留資格で過半数を占めます。過去10年間の推移を見ると、技能実習生が特に大きく増えていると分かります。

残留資格別に見た中長期残留者の過去10年間の推移
「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」(法務省)、単位:人

 仮に「移民」を国連の定義より厳格にして、安倍首相のイメージされているような「日本に永住している人たち」に限ったとしても、「特別永住者+永住者」で2019年には110万人を数えます。この数は富山県や秋田県の人口より多いのです。