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「数字」を数学として計算し、国語として読む

 19年1~3月期のGDP速報値は、多くのエコノミストの予想に反して年率2.1%増という結果でした。輸出は2.4%減った一方で輸入が4.6%も減り、輸出から輸入を差し引いた「純輸出」が大幅なプラスになったからといわれています。

 景気が悪化して輸出入が減っているのに、計算上はGDPが上昇=経済成長している、となった……。数字はそのまま読んではいけないと改めて痛感します。

 私たちデータサイエンティストも、数字を計算するだけでなく、文字として読んでから分析に取り掛かるよう心掛けています。なぜなら数字が全てを表現できれば良いのですが、そんなのは無理だからです。数字に表れないデータを知ることが分析の第一歩だと私は考えています。

 先述したように、景気動向指数と月例経済報告の乖離(かいり)は11年運用していて初の事態ですから、本来であればもう少し丁寧な議論が必要です。しかし参議院選挙と消費増税を前にして「景気を計測できている指標はどれか?」という「異論」を口に出せないようです。

 例えば、非正式の形でよいので、景気動向指数による基調判断が月例経済報告やGDP成長率と異なる場合、どの指標を追加するとズレは収束するか都度研究してもよいのではないでしょうか。(現在は景気が一循環を経過するごとに点検)

 私からの提案なのですが、政府・与党の皆さんには「十二人の怒れる男」という映画を見てほしいと思います。父親殺しの罪に問われた少年の裁判を巡る12人の陪審員たちの密室劇です。最初は、たった1人を除いて残り11人全員が有罪を主張します。しかし、たった1人だけが圧力に屈せず異論を述べ、やがて1人1人が思い込みや偏見を認めて、意見を変えていきます。この映画のように、異論を認めつつ、データで都度検証しながら議論を進める政治は訪れるのでしょうか。

EBPMのススメ

 「データで議論をする」という観点では、行政改革の一環として、EBPM(Evidence Based Policy Making=証拠に基づく政策立案)が注目を集めています。

 「平成30年度内閣府本府EBPM取組方針」(クリックするとPDFが開きます)にはEBPMについて「政策の企画立案をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで政策効果の測定に重要な関連を持つ情報やデータ(エビデンス)に基づくものとすること」と書かれています。そのために、課題把握・目標設定、政策手段の比較・検討、手段と目標の因果関係の検討、効果の測定などの言葉が並んでいます。

 しかしそんな大上段の表現より、2種類の結果が異なるデータが出てきたら、まず両方のデータを受け止める、理由をしっかり考える、周囲を巻き込んで議論する、そんな「当たり前」のことがEBPMの大原則だと私は考えています。そうした議論の上に立った政策論争が日本にも根付くことを願っています。